P-II-C-12
川崎病に対する血漿交換療法の遠隔成績
東京慈恵会医科大学小児科1),神奈川県衛生看護専門学校付属病院小児科2),埼玉県立小児医療センター感染科3)
藤原優子1),寺野和宏1),河内定貴1),齋藤亮太1),衛藤義勝1),豊田 茂2),城 宏輔3)

【背景】川崎病不応例の治療方法は確立していないが,治療戦略として血漿交換療法がある.1983年に初例に治療を行い,1986年までに初期は新鮮凍結血漿(FFP),後半は25% albuminを用い血漿交換療法を行った 5 例に長期経過観察を行った.【方法】川崎病に罹患し血漿交換療法を行い17~20年の長期経過観察が可能であった 5 例を対象とした.急性期はaspirin 30~60mg/kg,dipyridamole 5mg/kgで治療した.解熱が得られない例で 6~9 病日に血漿交換を 1 回のみ施行した.置換液はアルブミン 4 例,FFP 1 例であった.血漿交換後に 2 例にガンマグロブリンを補充した.5 例とも解熱したが,1 例は再発熱し,ガンマグロブリン400mg/kgの 3 日間投与により解熱した.急性期に 2 例に一過性冠動脈拡張を認めたが,退院時には改善した.早期より禁煙教育,肥満予防,高脂血症予防教育を行った.遠隔期経過観察はトレッドミル検査,心エコー検査,空腹時脂質検査,身体計測,血圧測定で行った.経過観察終了前には血液感染症のチェックを行った.【結果】成人期に血漿交換に対する病識は全例になかった.冠動脈病変は輝度亢進も含めて全例に認めなかった.急性期に心電図変化を認めた 1 例は遠隔期に心電図変化はなかった.肥満度25を超えるのは 1 例,治療を要さない高血圧 1 例,高脂血症は 2 例に認めた.喫煙者はいなかった.1 例で遠隔期に心電図変化を伴う心外膜炎に罹患し,治療を要した.【結論】HCVスクリーニングが行われていなかった時期に血漿交換を行ったが血液感染症は認めず,安全に施行していた.血漿交換は 5 例中 4 例で 1 回のみで有効であった.遠隔成績も良好である.しかし,現在の段階で未知の血液感染症罹患のリスクもあり,患者自身への十分な啓蒙が必要と考えられる.

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