P-II-C-13
川崎病遠隔期における肺血管床
埼玉医科大学小児心臓科
杉本昌也,先崎秀明,熊倉理恵,熊谷晋一郎,岩本洋一,石戸博隆,松永 保,竹田津未生,小林俊樹

【はじめに】川崎病は,冠動脈のみならず全身の血管炎であり,急性期の炎症が遠隔期の種々の血管床の機能に影響を及ぼしている可能性がある.われわれは形態上は正常な遠隔期体血管壁の機能に異常があることを報告したが,剖検例の検討においては,肺動脈にも組織学的変化がもたらされている.今回われわれは,いまだ未解明の川崎病遠隔期肺動脈の血管特性について検討した.【方法と結果】急性期に,冠動脈が 4mm以上の拡大を呈した川崎病患者31例(7.8 ± 4.8歳)において,心臓カテーテル検査時(発症時より4.8 ± 4.5年経過)に主肺動脈の圧と血流速を同時計測し,肺動脈input impedanceを算出し動脈血行動態を評価した.冠動脈病変残存症例(17例)および冠動脈病変消失症例(14例)のいずれにおいても,末梢部肺血管床の血管壁硬度が正常対照群としての小短絡(計算上のQp/Qs = 1.0)心室中隔欠損38例(6.7 ± 4.6歳)に比し有意に増加していた(p < 0.05,by ANOVA).近位部壁硬度は川崎病群で高い傾向を示した(p = 0.08).さらに,川崎病群では,反射波も増大し,血管床の不均一性が強く示唆された.また,血中の内皮機能障害のマーカーと動脈壁硬化に有意な相関(p < 0.05)がみられた.【考察】これらの結果は,炎症反応が低下した川崎病罹患後遠隔期においても,形態上は正常な肺血管壁に質的な変化が起こっている可能性を示唆するものであり,今後遠隔期における経時的観察の必要性を示唆する.さらに,これら肺血管床の変化は,冠動脈病変の残存いかんにかかわらず認められたことを考慮すると,冠動脈病変を呈しなかった川崎病における肺血管壁質的変化の検索の必要性も示唆するものと考えられた.

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