P-II-D-3
僧帽弁形成術を施行後,妊娠出産した多脾症候群,共通房室弁口の 1 例
京都大学医学部小児科1),京都大学医学部心臓血管外科2)
平海良美1),岩朝 徹1),馬場志郎1),鶏内伸二1),土井 拓1),池田 義2),中畑龍俊1)

成人先天性心疾患術後の女性では,妊娠分娩が重要な問題となってくる.今回,われわれは心内修復術後,重度の僧帽弁逆流(MR)を合併していたため,妊娠分娩に向けて弁形成術を施行した多脾症候群,共通房室弁口の 1 例を経験した.【症例】32歳女性.出生時は,特に異常を指摘されなかったが 3 カ月検診で心不全を指摘され,当科入院となった.症状は軽快したが先天性心疾患が疑われたため,1 歳時に心臓カテーテル検査が施行された.多脾症候群,左上大静脈遺残,下大静脈欠損,奇静脈結合,共通房室弁口と診断した.4 歳時に心内修復術を施行された.術後,僧帽弁閉鎖不全がみられたが,軽度であったため経過観察となった.その後,心エコー上次第に三尖弁逆流(TR),MRが進行してきたため,26歳時に心臓カテーテル検査(心カテ)を施行した.TRはI°,MRはI~II°で手術適応はなく,内科的管理で経過観察となった.しかし,その後心エコーでMRは重度となり,左室拡張末期径(LVDd)が拡大してきた.29歳時,本人が結婚し挙児希望があるため,再度心カテを行い今後の方針を決定することになった.心カテでは,肺動脈圧(PAp)30/5,15mmHg,肺動脈楔入圧(PCW)は 6mmHg,左心室圧125/(8)mmHg,左室拡張末期容量が174% of normalで,MRは重度であった.手術適応ありと判断され,僧帽弁形成術,弁輪縫縮術が施行された.術直後,PApは30/9,15mmHg,PCWは 9mmHgであった.術後の経過は順調で 1 カ月後に退院となった.利尿剤,強心剤,ワーファリンを内服していたが,ワーファリンは 3 カ月後中止された.1 年半後妊娠した.妊娠中,心エコーでLVDdはほとんど変化せず,心嚢液貯留なく,MRの進行もなかった.胎児の発育も順調であった.分娩方法については,硬膜外麻酔下無痛分娩が選択された.40週 6 日,Apgar score 8/9 点で2,744gの女児を出産した.右拇指多指症を合併していたが,他異常なく母子ともに健康であった.分娩後の心機能も良好であった.

閉じる