P-II-D-4
妊娠,出産を経験した心筋緻密化障害の家族例
秋田大学医学部小児科
石井治佳,原田健二,島田俊亮,青木三枝子,豊野学朋,田村真通

【目的】心筋緻密化障害は,心機能が軽度から重度まで症例ごとにその程度はさまざまである.今回私たちは,軽度心機能低下を伴った心筋緻密化障害の母体の妊娠,出産を経験し,さらにその祖母,その出生女児ともに本症であった 3 代の家族例を経験したので報告する.【症例】26歳,女性.WPW症候群.妊娠第一子は,自然流産.第二子の妊娠時,妊娠前,11,17,22,29週で心エコー検査およびBNPを測定した.妊娠前から妊娠29週にかけて,左室拡張末期径は56~60mmへ増加,左室短縮率は0.25~0.17へ低下,肺動脈収縮期圧は32~55mmHgへ増加,BNPは17~189pg/mlへ上昇した.妊娠後期さらなる心機能悪化が予想されたため,妊娠30週,予定帝王切開で分娩となった.娩出後も速やかな回復はなく,産後 4 週でBNP 222pg/mlと最高値を示した.【症例の児】女児.出生体重1,495g.全身状態は良好.胎児エコーで明らかな異常は認めていないが,出生後ECG上,心筋障害像を認め,心エコー上,LVSF 24%,LVEF 57%,所見上心筋緻密化障害と診断.BNP 2.6pg/ml.現在母児ともに元気に過ごしている.【症例の母】WPW症候群で治療されていたが,家族内検診の結果,心エコーでtypicalな心筋緻密化障害と診断されている(出生時の心不全に関するデータはない).【考察】祖母,母,娘と 3 代続いた家族性心筋緻密化障害を報告した.軽度の心機能低下の場合でも,周産期の経過では妊娠中,娩出後も,進行性の心機能悪化を来す可能性がある.各科が協力し分娩時期を含めたきめ細かな周産期管理が重要と思われる.

閉じる