P-II-D-5
動脈管依存性先天性心疾患における出生前診断の有用性の検討
岐阜県立岐阜病院小児循環器科1),岐阜県立岐阜病院小児心臓外科2)
後藤浩子1),桑原直樹1),安達真也1),桑原尚志1),滝口 信2),八島正文2),竹内敬昌2)

【背景と目的】動脈管依存性先天性心疾患では,出生後の対応が術前の児の状態に大きく反映する.そのため,胎児超音波診断法による出生前診断の現状および出生後の管理における有用性を検討する.【対象と方法】1997年 5 月~2005年 1 月の期間に,出生後入院加療を必要とした動脈管依存性の先天性心疾患の児75症例を対象とした.出生前診断がされていた群(以降A群)とされていなかった群(以降B群)とで(1)症例の内訳および動脈管の必要な交通方向,(2)在胎週数・出生時体重,(3)分娩様式,(4)入院時出生日数,(5)プロスタグラジン(以降PG)製剤使用の有無,(6)入院時の状態について検討した.【結果】A群は12症例.(1)出生前診断と一致で,内訳はHLHS 4 例,SV 1 例,TA 3 例,その他 4 例.そのうち,動脈管を左右交通が 6 例,右左交通が 6 例であった.(2)平均在胎週数は38週 5 日,平均出生時体重は2,624 ± 534g.(3)帝王切開例は 7 例(58%).(4)遠方出産 1 例を除いて,他は院内出生時より入院管理.(5)PG製剤使用は 6 例(50%).(6)児の状態変化に臨機に対応し,全例手術加療し得た.B群は63症例.(1)内訳はHLHS 1 例,SV 12例,TA 2 例,PA with IVS 5 例,TOF + PA 10例,IAA 10例,CoA complex11例,その他12例.そのうち,動脈管を左右交通が35例,右左交通が28例であった.(2)平均在胎週数は38週 5 日,平均出生時体重は2,705 ± 558g.(3)帝王切開は15例(23%).(4)平均入院時出生日数は5.5(0~120)日.(5)PG製剤使用は54例(85%)と高率であった.(6)入院時shock状態は 6 例(9.5%)であった.内訳は動脈管左右交通ではhypoxiaによるshockで 1 例が術前死亡.動脈管右左交通ではductal shockが 4 例でうち 1 例が術前死亡,高肺血流によるshockが 1 例であった.【結語】出生前診断の有無による,児の出生時成熟度は有意差を認めなかった.出生前診断により待機分娩を経て出生直後から前方視的に加療することは,PG製剤使用頻度の軽減や術前状態を安定でき,有用であった.

閉じる