P-II-D-7
胎児心エコー症例における三尖弁閉鎖不全の発症率とその原因
筑波大学臨床医学系小児科1),筑波大学産婦人科2)
高橋実穂1),堀米仁志1),濱田洋実2),藤木 豊2),松井 陽1)

【背景】三尖弁閉鎖不全(TR)は正常な新生児でも認められる.しかし,胎児期のTRは動脈管早期閉鎖,心奇形,胎児不整脈,双胎間輸血症候群などの発見の契機になり,心不全の徴候としても重要な意味を持つ.胎児TR症例について後方視的に検討した.【対象と方法】2001年 4 月~2005年 1 月に当院産科を受診し小児循環器医が胎児心エコーを施行した症例を対象とし,後方視的にTRの発症率と原因,予後について検討した.【結果】胎児心エコーは母144人,151胎児(DD双胎 3 組,MD双胎 1 組を含む)に対してのべ215回施行した.施行時期は19~39週,紹介理由は不整脈(31),心奇形疑い(20),心臓腫瘍(2),心臓以外の病変(40),IUGR(19),腔水症(9),胎児水腫(4),前児心奇形(9),双胎(8),その他(9)であった.TRが認められたものは14/151例(9.2%)であった.内訳はEbstein奇形(2),動脈管早期閉鎖(1),完全房室ブロック(1),QT延長症候群による徐脈,心室頻拍(1)の他に,IUGR(4),染色体異常(3),胎児甲状腺機能亢進症(1),胎児回腸閉鎖(1)が含まれた.severe IUGRで洞性徐脈を伴っていた 1 例(29週)では,PRも認められCTAR 35%と拡大していた.染色体異常の中では心奇形のない21 trisomyの 1 例がTAMによる貧血やヘモクロマトーシスを疑わせる肝不全を来し,死亡した.妊娠31週から母体Basedow病の治療が開始された 1 例では,母体がeuthyroidでも抗甲状腺抗体の移行により胎児がhigh outputの状況になっていた.出生後の児の 甲状腺機能亢進症に対して治療を開始した.【結語】TRが認められた胎児は14例(9.2%)で,容量負荷を来す病態以外にIUGR,染色体異常などが含まれた.出生後死亡したのは6/14(42%)であった.TRの発見が治療方針の決定に役立つ症例があった.

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