P-II-D-9
小児先天性心疾患における心筋細胞のapoptosis(その 1)─心筋apoptosis後の幹細胞の動員(剖検例での検討)─
京都府立医科大学大学院医学研究科発達循環病態学
佐藤 恒,白石 公,浜岡建城

【背景,目的】成人の心不全の病態に心筋apoptosisが関与し,幹細胞の動員と心筋細胞の再生が起こっていることが明らかになってきている.しかしながら小児先天性心疾患における詳細な心不全の病態や,幹細胞による心筋細胞の再生の有無については明らかではない.昨年までにわれわれは先天性心疾患で死亡した剖検例の検討を行い,先天性心疾患の心不全の病態に心筋apoptosisが関与していることを報告した.今回,先天性心疾患における心筋細胞のapoptosisに対する幹細胞の動員の関与を明らかにする目的で,先天性心疾患で死亡した剖検例における心筋細胞のapoptosisおよび幹細胞の検討を行った.【方法】(1)先天性心疾患の小児剖検例18例(新生児例 7 例)とage matchした対照小児 6 例にTUNEL染色を行った.(2)TUNEL染色を行った先天性心疾患の小児剖検例18例中の16例と対照小児例 1 例に対して,幹細胞の検出を目的としたc-kitによる免疫染色を施行した.【結果】(1)剖検例における先天性心疾患群の心筋細胞のTUNEL陽性率(0.42 ± 0.24%)は対照群(0.057 ± 0.023%)と比較して有意に高値であった(p < 0.001).(2)c-kit陽性細胞は先天性心疾患全例に認められ,その陽性率(0.0104 ± 0.0078%)は対照例(0.00278%)と比較して高かった.さらに先天性心疾患におけるc-kit陽性細胞の陽性率は,心筋細胞のTUNEL陽性率と有意な相関を認めた(r = 0.36,p < 0.05).【結論】小児先天性心疾患剖検例の検討において,c-kit陽性率は心筋のTUNEL陽性率と有意な相関を認めることから,小児先天性心疾患において,apoptosis後の心筋再生を目的とした幹細胞の動員が起こっている可能性が示唆された.

閉じる