P-II-D-10
小児先天性心疾患における心筋細胞のapoptosis(その 2)─先天性心疾患動物モデル(低酸素および容量負荷)における検討─
京都府立医科大学大学院医学研究科発達循環病態学
佐藤 恒,白石 公,浜岡建城

【背景,目的】成人の心不全の進行に心筋細胞のapoptosisが大きく関与していることは,剖検例や動物モデルでの検討によって明らかにされてきた.一方小児における詳細な心不全の病態はいまだ明らかではなく,心不全の原因もチアノーゼによる低酸素,左右短絡による容量負荷などさまざまである.昨年までにわれわれは先天性心疾患で死亡した剖検例の検討を行い,先天性心疾患の心不全の病態に心筋apoptosisが関与していることを報告した.今回,先天性心疾患における心不全の病態に対するapoptosisの関与をさらに詳細に検討する目的で,幼若ratを用いた低酸素および容量負荷モデルにおける心筋細胞のapoptosisの検討を行った.【方法】(1)幼若ratを用いて低酸素負荷(10%酸素)と容量負荷モデル(腹部AoとIVCを穿刺,AVシャントを作成)を作成,負荷終了後TUNEL染色を行った.(2)apotosisのsignal pathwayを解析する目的で,FasL,caspase 9,ASK1の心筋のウエスタンブロットを施行した.【結果】(1)低酸素負荷群のTUNEL陽性率(0.051 ± 0.023%)は,無処置対照群(0.034 ± 0.017%)と比較して有意に高値であり,容量負荷群のTUNEL陽性率(0.15 ± 0.035%)は,シャムope群(0.052 ± 0.0067%)と比較して有意に高値であった.(2)ウエスタンブロットでは,FasLについては無処置対照群と低酸素群,シャム群と容量負荷群とで有意差を認めなかった.しかしcaspase9およびASK1については無処置群よりも低酸素群,シャム群よりも容量負荷群でそれぞれ有意な亢進を認めた.【結論】低酸素および容量負荷が,心筋細胞のapoptosisを引き起こす要因となっている可能性が示唆された.apoptosisのsignal pathwayについては,低酸素および容量負荷ともにASK1を介するpathwayが関与することが示唆された.

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