P-II-D-11
肺血流増加型先天性心疾患における肺血管機能障害の検討(2)─血管内皮由来物質について─
京都府立医科大学大学院医学研究科発達循環病態学
問山健太郎,糸井利幸,白石 公,浜岡建城

【背景・目的】肺血流増加型先天性心疾患において,増大したshear stressが及ぼす肺血管機能障害の詳細なメカニズムは不明である.われわれはこれまでに,動静脈短絡(シャント)モデルラット肺を用いた孤立肺灌流モデルが肺血流増加型先天性心疾患における肺血管機能障害の検討に有用であることを報告してきた.今回,このモデルを用いた肺虚血後再灌流負荷後の肺高血圧時における血管内皮由来血管作動物質の反応についての知見を得たので報告する.【方法】4 週の雄Sprague-Dawleyラットに腹部大動脈―下大静脈シャントを作成し,8 週間通常飼育後,孤立肺灌流を行った.肺灌流時の負荷は20分の虚血後再灌流とし,経時的に肺動脈圧の変化(灌流前値に対する百分率で評価)と,バッファー中の窒素酸化物(NOx)およびエンドセリン-1(ET-1)の測定を行った.バッファー中のNOxはキャピラリー電気泳導で測定した.バッファー中のET-1 の測定はELISAで行った.【結果】(1)虚血再灌流後の肺動脈圧は,シャントラットで最大324 ± 83%まで上昇し,かつ30分以上持続した.しかし,シャムラットでは最大205 ± 11%までしか肺動脈圧は上昇せず,持続も12分までであった(p < 0.05).(2)NOxはシャントラットで256%まで増加し,シャムラットでは203%であった(p > 0.1).(3)ET-1 は灌流前の値がシャントラットで4.7 ± 1.9pg/ml,シャムラットで6.1 ± 3.8pg/mlだったが,灌流後は明らかに差がみられ,シャントラットで36.2 ± 1.9pg/ml,シャムラットで17.3 ± 1.3pg/mlであった(p < 0.05).(4)eNOSの阻害薬であるL-NAME投与後の灌流では肺動脈圧の変化がみられず,NOxの増加もみられなかった.また,ET-1 受容体拮抗薬のBQ-123投与下での灌流では虚血再灌流後の肺動脈圧の上昇が抑制できた.【結論】容量負荷のかかった肺に対する虚血再灌流後に起こる肺高血圧ではNO産生は減少しておらず,むしろET-1 産生の亢進の方が大きく関与していることが示唆された.

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