P-II-D-13
マウス胎仔心筋におけるCa2+ transientの経時的変化
防衛医科大学校小児科
川村陽一,石渡隆寛,安國真理,浅野 優

【背景】Ca2+ transientは心筋の収縮拡張機能を生み出す生理学的現象であり,心不全の病態生理の解明および治療のターゲットとして重要である.胎児期の心筋細胞は形態的にも機能的にも未熟なため,Ca2+ の動態も成熟心筋細胞とは異なると考えられているが,胎児期早期から後期にかけてのwhole heartにおけるCa2+ transientの経時的な変化については不明である.【目的】胎児心臓発生段階におけるCa2+ の心筋細胞内動態を調べるため,マウス胎仔心筋におけるCa2+ transientの経時的変化について検討した.【方法】ICRマウス胎仔(E10.5~18.5)および新生仔の心臓を摘出(各n = 20)し,心室筋細胞内Ca2+ を測定するため蛍光色素のFluo-3を用いて37°Cで15分間標識.その後,whole heartに電気刺激を加えて心筋細胞内Ca2+ の変化について蛍光観察を行い,心筋の収縮能を反映するTTP(time to peak)および拡張能を反映するT1/2(50% decay)を計測した.これと合わせ,マウス胎仔および新生仔の体重,心臓重量も測定した.【結果】TTPはE16.5で137.3 ± 5.0(ms)に対して新生仔では88.5 ± 3.8(ms),またT1/2はE16.5で226.3 ± 5.2(ms)に対して新生仔では156.5 ± 5.5(ms)であり,TTP,T1/2 ともに胎齢の変化に伴って有意に加速していた(p < 0.0001).一方,心臓の体重に対する重量比(HW/BW)は同時期から急激に低下していた.【考察・結語】HW/BWは胎齢16日頃から急激に低下していたが,心筋細胞は重量よりも機能的な発達が著しい結果,Ca2+ transientが迅速になる時期と一致して,心臓のポンプ機能が上昇していることが示唆された.

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