P-II-D-15
小児開心術における末梢血単核球CD163,HO-1 発現の検討
金沢大学付属病院小児科1),金沢大学付属病院心肺総合外科2)
山崎治幸1),石崎顕子1),斉藤剛克1),丸箸圭子1),太田邦雄1),築地秀典1),谷内江明宏1),新井禎彦2),小泉晶一1)

【目的】開心術中術後にはヘモグロビン/ハプトグロビン(Hb/Hp)複合体のCD163結合を介したシグナル伝達によりヘムオキシゲナーゼ(HO-1)やIL-10の産生が誘導され生体防御,損傷治癒に関与していると考えられているが詳細は不明である.今回先天性心疾患の手術症例で末梢血単核球のCD163,HO-1 の変動について検討した.【方法】2004年 6 月~12月に体外循環下に心内修復術を施行し文書での同意を得た12例(VSD 6 例,ASD 5 例,VSD + ASD 1 例).単球細胞表面抗原(CD14,CD16,CD163,CCR2,HLA-DR,CD36,ICAM-1),血漿IL-10,IL-6,遊離Hb,Hb/Hp複合体およびCD163,HO-1のmRNA発現を経時的に測定した.【結果】単球細胞表面抗原の発現は対外循環終了後にHLA-DR,ICAM-1 ともに有意に低下し(p < 0.001),CD36発現も低下傾向がみられた.血漿IL-10およびIL-6 は体外循環直後にピークを認め,以後速やかに低下を認めた.CD163mRNA発現は体外循環直後で17.7 ± 9.5倍,術後 1 日で9.6 ± 6.6倍に増加した.一方,CD163細胞表面抗原の発現は術後 6 時間より増加し,術後 1 日にピークを認めた.HO-1mRNA発現は体外循環直後3.6 ± 1.9倍,術後 1 日2.7 ± 1.8倍にそれぞれ増加した.またHO-1mRNAの発現は溶血が強く血漿中のHb/Hp複合体が多く存在する症例ほど術後 1~2 日に増加する傾向が認められた(4.0 ± 1.8 vs 1.7 ± 0.5,p = 0.08).溶血の指標として測定した血漿遊離HbおよびHb/Hp複合体は両者とも体外循環終了時にピークを認め,以後速やかに低下し術後 1 日にはほぼ術前レベルになった.【結論】CD163の発現増加は術後 1 日にピークを認めたのに対しIL10は術後早期にピークを認めた.またHO-1 産生もCD163よりも早期に増加している可能性が考えられた.術後単球のCD163発現増強はHO-1,IL-10産生を必ずしも伴わない.

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