P-II-D-16
Fallot四徴症肺高血圧における肺動脈complianceの重要性とBDAの限界
埼玉医科大学小児心臓科
熊谷晋一郎,先崎秀明,熊倉理恵,岩本洋一,杉本昌也,石戸博隆,増谷 聡,松永 保,竹田津未生,小林俊樹

【背景】肺高血圧に影響を与える因子には,肺血管抵抗だけではなく,容量血管や近位部の太い血管によって規定されるcomplianceおよびcharacteristic impedanceがある.どの因子がどれほど寄与しているかが分かれば,適切な治療介入ができる.われわれは経験的にFallotの肺高血圧において末梢血管のcomplianceが大きな影響を及ぼすと推測している.今回,flow catheterを用いてcharacteristic impedanceを求め,またそれに基づく逆行波分析から末梢のcomplianceを求める方法を考案した.またこれを用いてFallotに対するBDAの効果について分析した.【方法】対象は肺高血圧を持つFallot四徴症.flow catheterを用いた圧・流速同時測定のデータを10楷Fourier分析し,高周波領域でのimpedanceをカテ先におけるcharacteristic impedanceの推定値とした.またこれを用いて圧・流量を順行成分と逆行成分に分解した.末梢血管のcomplianceが低いほど逆行波が大きくなるはずなので,逆行波の振幅からcomplianceを推定した.BDAを行った症例では治療前後での数値の変化をみた.【結果】Fallot四徴症の肺高血圧はおもにinterventionで到達しづらい末梢容量血管の低いcomplianceによって生じることが分かった.BDAによって介入部位におけるcharacteristic impedanceは改善しても末梢のcomplianceは変化せず,したがって肺高血圧の改善には至らない症例が多かった.【まとめ】Fallot四徴症の肺高血圧は,おもに末梢血管の低いcomplianceによって生じており,BDAには限界があることが分かった.肺高血圧に治療介入する場合には,どの太さの血管において,characteristic impedance,compliance,resistanceのどれがどの程度影響を与えているのかを事前に評価しておくことが重要と考えられる.

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