P-II-E-3
無脾症における総肺静脈還流異常のMD-CTによる術前評価
聖隷浜松病院心臓血管外科1),聖隷浜松病院小児循環器科2)
立石 実1),小出昌秋1),国井佳文1),渡邊一正1),水上愛弓2),武田 紹2)

【目的】無脾症に伴う総肺静脈還流異常は,総肺静脈還流異常の修復と同時に合併心奇形の外科的治療が必要とされることが多く,術前の正確な形態診断は重要である.今回,特異な形態をした無脾症に伴う総肺静脈還流異常 3 例に対し,術前に全麻下呼吸停止下に16列MD-CTを行い,術式の検討に非常に有用であったため報告する.【方法】GE社製16列MD-CTを静脈,吸入麻酔および筋弛緩剤で全身麻酔をかけ,呼吸停止状態として0.625mmスライスにて撮像.【対象】症例はいずれも右室性単心室,共通心房,共通房室弁.症例 1 はTAPVC(1B + 2B)で日齢 8 にMD-CT施行,PVはさまざまな方向から多数分かれてSVCおよびRAに還流.日齢21に右BTシャント施行.1 歳時にTAPVC修復術とGlenn手術を行った際,MD-CTの画像を元にすべてのPVを同定し共通心房側に残してSVCを離断した.症例 2 はTAPVC(1A)で日齢25にMD-CT施行,共通肺静脈は垂直静脈を介してLSVC後面に還流.1 カ月時に肺動脈形成とBTシャントを施行.11カ月時にTAPVC修復術とGlenn手術を行ったが,垂直静脈を共通心房に吻合したところPVOとなりtake down.CT画像から共通肺静脈を同定し直接吻合し得た.症例 3 はTAPVC(3).1 カ月時に垂直静脈を離断し心房に吻合,同時に肺動脈絞扼術を行った.その後吻合部狭窄あり心カテによる造影を行ったが特異な肺静脈の形態診断がつかず11カ月時に行ったMD-CTで肺静脈と共通肺静脈腔,心房の関係を確認.肺静脈還流修復とGlenn手術を行った.【結語】呼吸停止下に16列MD-CTによって,カテーテルでは描出しにくいPVの詳細な形態の情報が得られ,術式をデザインするうえで非常に有用であった.

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