P-II-E-6
Idioventricular rhythmを呈したCantrell症候群の 1 例
豊川市民病院小児科1),藤田保健衛生大学臨床病理学2)
江竜喜彦1),鈴木恭子1),小林朱里1),安藤仁史1),畑 忠善2),小倉良介1)

【はじめに】Cantrell症候群はmidline supraumbilical abdominal wall defects,deficiency of the anterior diaphragm,defects in the diaphragmatic pericardium,defects of the lower sternum,congenital intra-cardiac defectsの 5 徴を示す先天性多発奇形である.われわれはidioventricular rhythmを呈した本症候群の 1 例を経験し,14年にわたる臨床所見について報告する.【症例】在胎41週,出生時体重2,730gにて出生.生下時に腹壁離開,臍ヘルニア,心臓脱を認めて外科的治療を行った.同時期に認められた心室中隔欠損(筋性部小欠損)は 1 歳時に閉鎖した.小学 1 年の検診にて不整脈を指摘,24時間心電図よりidioventricular rhythm(78/min)と診断.胸部X線では心陰影の右方偏位を認めたが,エコー上の心機能は正常であった.idioventricular rhythmは運動により正常洞調律に復帰することから定期検診とした.小学 6 年時の心電図もidioventricular rhythm(70/min)であったが,洞調律時の心電図がV4~6 の平低化STを示し,心エコーから粗性な左室筋層を認めたためMRIを施行した.結果,左室側の中隔壁に長径20mm深さ 5mmの潰瘍状の欠損を認めた.本症候群のまれな合併である憩室は心室の自由壁に発生する報告が多く,この潰瘍状欠損を憩室と判断するには論点が存在すると思われる.現在,患児は無症状に経過し定期観察中である.【結語】idioventricular rhythmは循環動態に破綻を来さなければ内科的治療対象にはならない.一方,心室中隔の潰瘍状欠損は乱流形成により血栓症の基盤になる可能性がある.今後,血栓症や不整脈源性心筋異形成等について注意深い観察が必要と考える.

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