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無脾症候群の治療経験
筑波大学大学院人間総合科学研究科循環器外科1),筑波大学大学院人間総合科学研究科小児科2),筑波大学附属病院心臓血管外科3)
野間美緒1),平松祐司1),榎本佳治1),松下昌之助1),重田 治1),榊原 謙1),松原宗明3),佐藤真剛3),堀米仁志2),高橋実穂2)

【目的】当科における無脾症候群に対する治療の問題点・課題を明らかにする.【対象・方法】2000~2004年の 5 年間に当科で外科治療が行われた無脾症候群 8 例について,各症例ごとに治療の経緯を振り返り検討した.【結果】男児 5 例,女児 3 例.単心房 6 例,単心室 7 例.共通房室弁口 7 例.肺動脈狭窄 6 例,肺動脈閉鎖 1 例.総肺静脈還流異常(心臓型を除く)3 例,部分肺静脈還流異常 1 例.外科治療を要する消化管疾患を 3 例に認めた.初回手術はmod. B-T shuntが 6 例,TAPVCの修復と肺動脈絞扼術を行ったものが 1 例,TAPVC修復とBDGを行ったものが 1 例であった.BDGまで到達したものは 6 例あり,その到達年齢は 5 カ月~7 歳 3 カ月であった.TCPCまで到達したものは 2 例で,その到達年齢はいずれも 8 歳であった.カテーテルインターベンションは,末梢肺動脈狭窄やシャント狭窄に対するバルーン拡張術と,TCPCに先行する側副血管のコイル塞栓が行われた.肺リンパ管拡張症を合併した 1 例を肺炎で失った.【問題点・課題】列挙する.(1)TCPCに到達したうちの 1 例は,異常肝静脈還流によるチアノーゼ出現のためTCPC後 2 回の異常血管結紮術を要したが,BDGからTCPCまでの 5 年間という期間が悪影響を及ぼした可能性があった.(2)初回手術はmod. B-T shuntが多かったが,術後房室弁逆流が出現,悪化し心不全傾向を示す症例があった.早期にBDGを行うことにより制御可能なものもあったが,低形成弁の弁形成術は困難であった.(3)TAPVC合併例での肺血流コントロールは,TAPVC修復を行った 1 例でも再手術を要したが,TAPVCを行わなかった 1 例ではさらに困難であった.(4)低形成のIVCが脊柱を乗り越え心尖側心房に還流するものが1例あり,TCPCに際しては血流の誘導に工夫が必要と考えられた.

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