P-II-E-9
低体重新生児における体外循環非使用心房中隔欠損作製術
豊橋市民病院心臓血管・呼吸器外科1),豊橋市民病院小児科2)
村山弘臣1),渡邊 孝1),矢野 隆1),木田直樹1),小林淳剛1),安田和志1),野村孝泰2)

【はじめに】体重1,900gの左心低形成症候群症例に対して,体外循環を使用せず,手術的に心房中隔欠損を作製(ASD creation)し,併せて両側肺動脈絞扼術を施行して血行動態の安定を得た.本術式は低侵襲でASD creationが可能で,普遍的術式として有用と思われた.【症例】症例は在胎37週 0 日,体重1,974gで出生の男児.心エコーにて僧帽弁閉鎖,大動脈弁閉鎖によるHLHSと診断し,直ちにPGE1の持続投与を開始した.ルームエアでの経皮的酸素飽和度は65%前後と低く,狭小心房間交通も併せて診断した.患児が低体重であったため,Rashkindカテーテルによる経皮的アプローチは困難と判断した.そこで,第 6 生日,Norwood手術の前段階として,ASD creation,両側肺動脈絞扼術を施行した.手術は胸骨正中切開で行った.右房壁にタバコ縫合をおき,その中心から手作りの鈍針cannulaを挿入した.それを消息子として使用し,心房間交通孔を検索した.同cannulaによる圧測定と血液ガス検査にて,先端が左房内に入ったとことを確認した.これを参照して,cannulaの代わりにrongeurs鉗子を挿入し,心房中隔壁を把持,切除した.3 回の切除により,左房圧は25~8mmHgまで低下し,経皮的酸素飽和度は90%以上に上昇した.そこで,PTFE sutureを用いて,左右中心肺動脈を外周 8mmに絞扼し,手術を終了した.心エコー検査で,心房間交通は 3mmの開口を確認できた.【考察】手術的にASD creationを行う場合,近年では体外循環を用いることが多い.体外循環を使用しない場合はinflow occlusionによる方法,Blalock-Hanlon手術などが挙げられる.しかし,いずれも相応の困難性を有し,手術侵襲による血行動態の破綻が懸念される.特に体重2,000g未満の低体重児におけるこれらの手術および周術期管理は容易ではない.本法は非直視下手術ではあるが,血行動態に大きな負荷をかけることなく施行可能であり,有用な方法であると思われる.

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