P-II-E-10
先行手術が両方向性Glenn手術例の肺血管床に及ぼす影響
岩手医科大学附属循環器医療センター小児科1),岩手医科大学附属循環器医療センター麻酔科2),岩手医科大学附属循環器医療センター心臓血管外科3)
高橋 信1),小山耕太郎1),神崎 歩1),門崎 衛2),大内寿枝子2),石原和明3)

【目的】先行手術が両方向性Glenn手術例の肺血管床に及ぼす影響を明らかにすること.【方法】対象は1997年から 7 年間に当センターで両方向性Glenn手術を受けた36例(男:女22:14,手術時年齢10.0 ± 4.9mo,体重6.8 ± 1.8kg).疾患は単心室15例,左心低形成症候群 6 例,不均衡型房室中隔欠損 5 例,動脈弁閉鎖を伴うEbstein病 2 例,純型肺動脈閉鎖 1 例,三尖弁閉鎖 1 例,重症大動脈弁狭窄 1 例,その他 5 例である.対象を先行手術の有無・種類から,(1)先行手術なし(N群,8 例),(2)PAB(P群,4 例),(3)S-P shunt(S群,13例),(4)大動脈弓再建 + S-P shunt(A-S群,7 例),(5)大動脈弓再建 + RV-PA shunt(A-R群,4 例)に分類し,Glenn手術前のカテーテルデータからPA index(PAI,mm2/m2),左右肺動脈の断面積の差を体表面積で標準化した|RPA area-LPA area|/BSA(mm2/m2),左右肺動脈の平均圧RPAp,LPAp(mmHg),肺血管抵抗Rp(U),肺体血流量比Qp/Qsを求めた.【結果】PAIはP群が519 ± 338と他の群に比べて有意に大きく,次いでN群368 ± 99,S群313 ± 132,A-R群249 ± 126,A-S群198 ± 151であった.|RPA area-LPA area|/BSAによる左右肺動脈の不均等性はP群が3.9 ± 0.2と最も小さく,A-S群が11.3 ± 6.6と最も大きかった.RpはA-R群が有意に高値で4.1 ± 2.5,A-S群2.4 ± 1.2,S-P群2.4 ± 1.4,P群2.3 ± 1.6,N群1.7 ± 1.1であった.Qp/Qs,RPAp,LPApは各群で差がなかった.【まとめ】先行手術がないかPABの単回手術で両方向性Glenn手術に至った例の肺血管床は良好な状態であった.大動脈弓再建を行った例では肺血管床の発育不良と不均等性が強く,この群における術式の改良とカテーテル治療の重要性が示唆された.

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