P-II-E-11
グレン手術症例の検討─特に付加手術を中心に─
富山医科薬科大学第一外科1),富山医科薬科大学小児科2)
大嶋義博1),鈴木恵美子1),土肥善郎1),三崎拓郎1),橋本郁夫2),市田蕗子2)

当科では,フォンタン適応例に対して,段階的外科治療を基本方針としている.今回はグレン吻合時の付加手術を中心とした治療経験について報告する.【対象および方法】2001年 1 月~2004年12月に当科で行われたグレン吻合症例は20で,無脾症 4,cTGA 4,HLHS 4,MA 2,TA 2,DIRV 2,PPA 2 であった.手術時月齢は 2~61(中間値10)カ月,6 カ月未満は 5 例であった.先行手術は,BT短絡17,Norwood(RV-PA短絡)3,CoA修復と肺動脈絞扼(PAB)1,両側PAB 1,ASD拡大 1.付加手術は,PA形成 5,房室弁形成 3,ASD拡大 2,PVO解除(心臓型)2,Norwood 1,DKS吻合 1,冠静脈洞口閉鎖(CSO)に対する左上大静脈フラップを用いたCS-LA交通孔形成 1 で,付加短絡は 8 例に残した(4 カ月未満の 3 例は全例).術前の肺血管抵抗(Rp)は0.5~4.7(中間値1.7)単位,PA平均圧は 7~19(中間値13)mmHgであった.【結果】手術死亡,病院死亡なし.両側グレン吻合 3 例のうち 2 例で,遠隔期に片側のグレン不全がみられた(1 例は術前Rp 4.7,術後 3 カ月で左PVO,他の 1 例は左PA低形成,ステント留置).房室弁形成の 2 例に高度逆流のため人工弁置換が,PA形成部の再狭窄 2 例にカテーテル治療が行われた.遠隔死はTA Ib(心筋炎)とHLHS(AR,TRの増悪)の計 2 例であった.フォンタン手術は 8 例に行われ,待機 5 例,評価待ち 5 例である.【まとめ】HLHSに対する一次手術成功に伴い,グレン手術の低年齢化が進んだが,付加短絡が必要な例も多く,遠隔期での肺動脈発育,心機能を含めた検討を要する.CSOはまれな奇形であるが,術前診断が重要で,簡便な術式によりグレン吻合が可能となる.二弁口化や弁尖縫合など房室弁形成を試みたが,成績は不良で,術式の改良が必要である.

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