P-II-E-12
完全大血管転位症(TGA)(III)に対するconduitを使用しない右室流出路再建術
北里大学医学部胸部外科
中島光貴,宮地 鑑,高崎泰一,小原邦義,吉村博邦,鳥井晋三,町井正人

【目的】完全大血管転位症(TGA)(III)に対して,乳幼児期のconduit使用の右室流出路再建術は遠隔期の再手術の可能性が高い.今回報告する再建術により,再手術の可能性が減少し,患者のQOLを向上させると考えられたため報告する.【方法】症例 1 は 2 歳,体重9.8kgの男児.診断はTGA(III),肺動脈狭窄(PS),僧帽弁閉鎖不全,心房中隔欠損症,左modified Blalock-Taussig-shunt(mBTS)術後(生後25日に施行).僧帽弁前尖にcleftを認め,形成術施行.大動脈直下の右室流出路を20mm切開.心室中隔欠損(VSD)を拡大し,右室流出路の異常筋束を切除.左室から大動脈へのreroutingとしてVSD閉鎖.次に肺動脈弁輪下まで剥離後,肺動脈離断.肺動脈後壁を直接右室切開部に縫着し,右室流出路後壁とした.また肺動脈前壁を肺動脈分岐部まで切開し,Goretex 1弁付きパッチで右室流出路前壁を再建.術後 1 年の心臓カテーテル検査において,左室/右室同時圧は32/102mmHg,右室流出路に圧較差は認めなかった.症例 2 は生後 7 カ月,体重5.5kgの女児.診断はTGA(III),肺動脈閉鎖(PA),左肺動脈狭窄,動脈管開存,右mBTS術後(生後 2 カ月に施行).右室流出路を20mm切開し,VSD閉鎖.PAであったが,遺残主肺動脈を弁輪直上で離断.その主肺動脈後壁を直接右室切開部に縫着,右室流出路前壁はバルサルバ洞付 1 弁付きパッチを使用し再建した.術直後の心臓エコー検査では右室流出路の圧較差は認めず,弁の可動性良好で逆流も認めなかった.【結論】TGA(III)に対し,本症例はconduitを使用せずに自己組織を使用するため,成長発育による右室流出路の狭窄を減少させることが可能と考えられた.

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