P-II-E-14
4 弁すべてに逸脱所見を認めたmultiple floppy valvesの 1 例
国立循環器病センター小児科1),国立循環器病センター心臓血管外科2)
元木倫子1),塚野真也1),山田 修1),越後茂之1),八木原俊克2)

【背景】複数の弁に肥厚,逸脱を認めるmultiple floppy valvesは,心エコー検査にて診断可能な疾患でありまれではない.しかし,4 つの弁すべてが逸脱した症例の報告は非常に少ない.【目的】僧帽弁逸脱で発症し,のちにすべての弁の逸脱,逆流の進行を認め,2 弁置換術を施行した 1 例を経験したので,臨床経過に術中所見,病理所見を加え報告する.【症例】19歳女性.1 歳で心雑音を指摘され,MVPと診断された.前尖の肥厚が著明であり,三尖弁でも同様の変化を認めた.7 歳時の心エコー検査ではMR2°,CTR1°であった.15歳頃から心拡大の進行とMRの悪化とARの出現を認めた.19歳になり易疲労感増強し,CTR 73%と心拡大はさらに進行.著明な左室拡大,4°のMR,ARを認めた.急速に進行した弁逆流に対して外科的治療目的で当センター転院.心エコー上 4 つの弁のすべてに逸脱所見を認めた.僧帽弁の前尖の肥厚は著明であり,MR,ARは 4°,TR 2°で,PRは認めなかった.心臓カテーテル検査でもすべての弁の逸脱を認めた.明らかな家族歴はなく,関節の可動性はやや亢進していたが,明らかな骨格異常や皮膚の異常,水晶体の異常は認めなかった.弁の変性が強い可能性が高いため,僧帽弁と大動脈弁は弁置換術を行い,逆流が軽度である三尖弁は形成術を施行した.摘出した弁はゼラチン様で不規則に肥厚し,特に僧帽弁はマシュマロ状に著明に肥厚していた.組織学的にはmyxomatous degenerationが重度であった.同時に採取した大動脈壁は中膜の弾性繊維の断裂を認め,これらはマルファン症候群を示唆する所見であった.【考察】今回経験した症例では 4 つの弁すべてに逸脱所見を認め,MR,ARについては急速に進行し 2 弁置換術を必要とした.結合織の異常も疑われるため,他の 2 弁のみならず大動脈拡大についても今後の経過に注意が必要である.

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