P-II-E-15
肺動脈弁欠損症に対する外科治療とその成績
富山医科薬科大学第一外科1),富山医科薬科大学小児科2),富山医科薬科大学周産母子センター3)
土肥善郎1),大嶋義博1),島津親志1),大高慎吾1),三崎拓郎1),橋本郁夫2),市田蕗子2),宮脇利男2),吉田丈俊3),二谷 武3)

【はじめに】肺動脈弁欠損症(APVS)症例の中には乳児期早期に心不全や呼吸不全症状を呈する予後不良な疾患群が存在する.APVSはファロー四徴症(TOF)に合併するものが多いとされるが,われわれは正常心室中隔(IVS)を有するまれな 1 例を経験した.今回,APVS症例に対し施行した外科治療とその成績およびAPVS with IVS症例の臨床像について文献的考察を加え報告する.【対象と手術】症例は2001年 1 月~2004年12月に当科にて手術を施行したAPVSの 3 例である.内訳はAPVS with TOFが 2 例,APVS with IVSが 1 例で,前者の 2 例は拡張した肺動脈による気管支圧迫のため呼吸不全症状を呈していたため術前にnasal DPAPによる呼吸管理を必要とし,早期に心室中隔欠損孔閉鎖,1 弁付きパッチを用いた右室流出路形成および肺動脈縫縮による一期的根治手術を施行した.手術時年齢/手術時体重はおのおの 2 カ月/4.6kg,22日/2.7kgであった.後者の 1 例は肺動脈の拡張かつ呼吸器症状は軽度なものの,動脈管開存に伴う高度な肺動脈弁逆流(PR)により心不全徴候が強く,日齢 3 に動脈管結紮術を施行した.手術時体重は3.3kgであった.【結果】早期死亡は認めなかった.術後平均6.6日(1~15日)で全例抜管可能であった.APVS with TOFの 1 例で術後まもなくPR,TRによる心不全を認め,術後 5 カ月に肺動脈弁置換術を施行した.他の 2 例は術後特記すべき問題なく経過し現在外来経過観察中である.これまで 3 年 3 カ月の経過観察で遠隔期死亡は認めていない.【結語】乳児期早期に心不全や呼吸不全症状を呈する本群において,APVS with TOF症例では心不全および呼吸不全症状を軽減すべく心内修復術を行う必要があるが遠隔期のPRの出現に留意した経過観察が重要である.APVS with IVS症例は呼吸不全症状が軽度なものの動脈管開存に伴う高度肺動脈逆流により心不全症状が強く出現する特徴を有しPDA閉鎖が有効な治療法であった.

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