P-II-E-16
ASD閉鎖術における各種アプローチの臨床的優位性
東邦大学医学部心臓血管外科1),横浜市立大学医学部第一外科2)
小澤 司1),浜田 聡1),吉原克則1),益原大志1),藤井毅郎1),横室浩樹1),塩野則次1),渡邉善則1),小山信彌1),高梨吉則2)

【背景】先天性心疾患の手術において,ASD閉鎖術は登龍門的開心術といえるが,近年,minimally invasive cardiac surgery(以下MICS)という概念が出現し,さらにインターネット普及に伴う患者側への医療情報提供の向上も手伝って,皮膚小切開などアプローチの差異も含めた質の高い手術が要求されるようになった.しかも今後,循環器小児科医による経カテーテル的ASD閉鎖術も普及していくと考えられる.そこで今回,ASD閉鎖術におけるアプローチ法の変遷により,臨床的な優位性が得られたかについて検討した.【対象と方法】年齢15歳以下の小児で右前側方開胸,あるいは正中皮膚小切開 + 胸骨部分切開アプローチにより直接閉鎖を行った中心部欠損型ASD 34例を対象とした.右前側方開胸アプローチ群(R群:15例),正中皮膚小切開 + 胸骨体部亜全切開で胸骨柄部の皮下を広範に剥離しアプローチした群(F群:8 例),皮下の剥離を行わずに正中皮膚小切開 + 胸骨下半切開にてアプローチした群(M群:11例)の 3 群間でretrospectiveに比較検討した.統計処理としてone-way factorial ANOVAを用い,数値はmean ± SDで示した.【結果】3 群間において手術時年齢,術前体重,術前Hb値,人工心肺回路充填量,人工心肺時間,術後入院期間に有意差はなかった.体重あたり術後ドレーン排液量に関しては統計的有意ではないもののM群,F群で少ない傾向を認めた(p = 0.084).また手術時間と術後人工呼吸管理時間についてはM群で短く(p = 0.038,0.002),周術期最低Hb値はM群で高値を示した(p = 0.033).【考察・まとめ】正中皮膚小切開 + 胸骨下半切開アプローチは術後創痛軽減や美容上の利点のみならず,術後貧血防止や手術時間,人工呼吸管理時間の短縮に寄与し,低侵襲なアプローチである可能性が示唆された.

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