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心臓カテーテル検査における全身麻酔管理の有用性について
岡山大学大学院医歯学総合研究科小児科1),岡山大学大学院医歯学総合研究科麻酔・蘇生科2),岡山大学大学院医歯学総合研究科心臓血管外科3)
山内 泉1),大月審一1),片岡功一1),岡本吉生1),日置里織1),森島恒雄1),竹内 護2),岩崎達雄2),戸田雄一郎2),佐野俊二3)

【目的】当施設では従来心臓カテーテル検査・治療(以下カテ)は,原則的に小学生以下では静脈麻酔(以下静麻)に局所麻酔(以下局麻)を併用し,中学生以上では局麻のみで施行してきた.近年ハイリスク症例および,厳密な呼吸管理下での血圧測定を必要とする症例では,麻酔科医による全身麻酔管理(以下全麻)を行うようにしている.カテにおける全麻の有用性について検討する.【対象】過去10年間に当施設で施行したカテ1,177症例中,全麻下に行った139例.【結果】全カテ件数に占める全麻下のカテ件数は,2002年以前は 5%未満,2003には年17%,2004年には39%と増加していた.全身麻酔は主として,複雑心奇形の年少児例,SpO2 75%以下の低酸素血症例,21-trisomy症例,フォンタン手術適応の境界例,カテーテル治療症例などで施行していた.麻酔科医による積極的な関与としては,(1)著しい低酸素血症を伴う肺血流減少例での循環動態保持,(2)カテーテル治療における一過性の循環動態変化への対応,(3)カテ中肺出血を来した症例での呼吸管理,止血剤投与,(4)緊急時における蘇生などであった.これらの関与により,重大な合併症を回避することが可能であった.また,当初静麻と局麻の併用下にカテを開始したが,呼吸状態が不安定となり全麻に変更した症例が 2 例あった.全麻の合併症として,筋弛緩剤が誘引と考えられる不整脈を 1 例に認めたが,抗不整脈剤によりコントロール可能であった.対象のうち,全麻下のカテにより重大な合併症・後遺症を来した例はなかった.【考察と結論】呼吸,循環の全身管理により安定した血行動態で検査がすすめられること,緊急時迅速に対応が可能であること,患者の姿勢が安定し術者が治療手技に専念できることなど,全麻下のカテの利点は多いと考えられた.

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