P-II-F-2
経食道エコー(TEE)を使用したFontan手術の麻酔法について
東京女子医科大学麻酔科学教室
森野良蔵,高田勝美,野村 実

Fontan手術に対する麻酔は通常,肺血管抵抗を下げることを主目標に,中心静脈圧と左房圧の差(transpulmonary gradient)を参考にしながら輸液負荷,強心薬補助,呼吸器の設定を変化させ麻酔を行っている.実際にはFontan手術の人工心肺からの離脱時,圧測定から明らかになる,transpulmonary gradient以外にも,房室弁逆流,心機能,肺静脈狭窄,側方トンネル(lateral tunnel),心外導管(extracardiac conduit)の狭窄など圧測定系のみでは推し量ることができないパラメータがFontan循環に影響を及ぼし,これらの要素を確実に把握しながら麻酔をすることが必要になってくる.そのためには経食道エコー(TEE)でFontan循環に影響を与える因子を確実に確認することが必須であると考えている.当院においては,麻酔科医自身が先天性心疾患手術の全症例にTEEを挿入して,麻酔導入直後に術前の問題点の再評価と,人工心肺離脱時に手術の評価を行い,以後のdecision makingの手段として有効に使用している.今回は,当院におけるFontan手術時のTEE使用法,TEEを活用した麻酔の考え方,またTEEが有用であった実際の症例を示して,従来のtranspulmonary gradientを参考にした麻酔との違いを報告する.

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