P-II-F-3
重症心不全を来した拡張型心筋症にβ阻害剤持続注入療法を用い救命し得た 1 乳児例
国立循環器病センター小児科
林  環,渡辺 健,細田和孝,北野正尚,黒嵜健一,越後茂之

【背景】NYHA 4 度の心不全患者に対するβ阻害剤の有効性は議論の分かれるところである.今回乳児期に発症した拡張型心筋症で抜管困難な重症心不全に対して救命的に静注でβ阻害剤を導入し内服薬治療に進み得たので,β阻害剤の適応についての考察を含め報告する.【症例】在胎中および出生後特に問題なし.生後 3 カ月から咳嗽,哺乳困難,不機嫌を認めCTR 61%と心拡大を認め入院.入院時心拍数201回/分,血圧77/33mmHg,SpO2は計測不能.意識は不穏で陥没呼吸,全身蒼白,代謝性アシドーシスを認め鎮静,人工呼吸管理とし,DOA,DOB,ミルリノンを開始した.心エコー図でLVDd 46mm(206%N),LVEF 0.28であった.心筋生検は拡張型心筋症に合致.ジゴキシン静注を開始したが心拍数制御は不十分で心拍数が150回/分をこえると心拍出量が低下し乏尿,代謝性アシドーシスに容易に陥るため,十分な説明と同意を得て救命的にβ遮断剤持続静注を試みた.まずDOA,DOBを漸減中止し,ミルリノン0.75γg/kg/minのみとした後にインデラル0.05mg/kg/dayの持続静注を開始した.以後0.01mg/kg/dayずつ増量し約 4 カ月かけて目標とした 1mg/kg/dayに達した.その後筋弛緩剤と鎮静剤を中止し経口開始し,インデラル静注からアーチスト内服,ミルリノン静注からレニベース内服に移行期間を設けて変更し,8 カ月後に抜管できた.現在摂食,運動のリハビリ中である.【考察】心拍数上昇で血行動態が破綻する症例にβ阻害剤持続静注は有効であった.その後静注から内服薬に変更ができ,今後のre-remodelingが期待できる.

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