P-II-F-4
小児開心術中における近赤外線スペクロトスコピー(NIRS)を用いた血液希釈の安全性についての検討
あいち小児保健医療総合センター心臓外科1),あいち小児保健医療総合センター循環器科2)
水野明宏1),前田正信1),岩瀬仁一1),佐々木滋1),安田東始哲2),福見大地2),沼口 敦2),長嶋正實2)

【目的】近年,小児でも無輸血開心術の適応が増えているが,その安全限界はいまだ定まっていない.今回われわれは開心術中の患児の前額部に近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)をつけ,脳酸素飽和度(rSO2)および脳血色素量(HbI)を同時モニターしヘモグロビン(Hb),ヘマトクリット(Hct),混合静脈血酸素飽和度(SvO2),体外循環還流量,温度などを無輸血群,早期輸血群(ポンプ開始直後に輸血開始した群),後期輸血群で比較検討した.また同時測定した血清S100蛋白値(S100)も加え比較検討した.S100の検体採取は麻酔導入後,大動脈遮断解除30分後,体外循環終了後,手術終了後,体外循環24時間後に行った.【対象】症例は2003年11月~2004年 9 月までの11カ月間に施行した開心術53例.無輸血群は31例,平均年齢は62.5 ± 45.7カ月,平均体重は18.0 ± 11.4kg,対象手術はASD,VSDなどであった.早期輸血群は13例,平均年齢は4.9 ± 3.5カ月,平均体重は5.0 ± 1.3kg,対象手術はVSDなどであった.後期輸血群は 9 例,平均年齢は63.8 ± 62.8カ月,平均体重は18.4 ± 14.7kg,対象手術はTOFなどであった.【結果】術後脳神経合併症を起こした患者はいなかった.各群でrSO2はSvO2と,HbIはHb,Hctと相関関係を示した.またrSO2は体外循環中の温度,灌流量によっても鋭敏に変化を示した.S100は各群において大動脈遮断解除30分後に最上昇し以後漸減した.後期輸血群の 1 例で他と比べS100の著明な上昇を認めた.【考察】NIRSは小児開心術中の脳合併症を防ぐ一つの指標となり,これを観察しながら輸血のタイミングを決定していく必要があると考えられた.またS100,NIRSなどの指標とともに術後の精神発達に影響を及ぼしているか検討中である.

閉じる