P-II-F-5
小児開心術症例に対するVV-modified ultrafiltraitionの有用性
東京慈恵会医科大学心臓外科
松村洋高,森田紀代造,黄 義浩,中村 賢,橋本和弘

【目的】小児開心術症例では,体外循環後に種々のchemical mediatorに起因するSIRSが惹起され,術後肺高血圧発作の一要因となるため,肺高血圧合併症例では術直後の予後を大きく左右する.われわれは以前よりAV-modified ultrafiltraition(MUF)を導入し,術直後の肺動脈圧の低下に効果を得てきた.今回はVV-MUFのchemical mediatorに及ぼす効果を検討する.【方法】対象は,肺高血圧症を合併した 6 例(心室中隔欠損症 5 例,房室中隔欠損症 1 例)で,手術時年齢 4 カ月~1 歳 9 カ月(平均8.3 ± 5.7カ月),手術時体表面積は0.27~0.48m2(平均0.32 ± 0.07m2).体外循環終了直後に右房より脱血,Aquastream AS04を用いてultrafiltraitionを行い,右房に返血する方式で,流量10ml/kg/min.にて30分間のMUFを施行する.(1)麻酔導入時,MUF施行前後に動脈ラインより検体を採取し各種chemical mediator(ET-1,TXB2,PGF1α,IL-6,IL-8,エラスターゼ)を測定する.(2)MUF前後の肺動脈圧の推移を検討する.【結果】術後,肺高血圧発作を認めた症例は 1 例もなかった.MUF施行前後にてTXB2(pg/ml)は47.9 ± 23.6が4.1± 2.8,IL-6(pg/ml)は662.7 ± 347.6が480.2 ± 202.3,IL-8(pg/ml)は43.6 ± 21.1が25.4 ± 11.4と有意差は認めなかったが低下傾向がみられた.肺動脈圧/大動脈圧比は術前0.62 ± 0.26が人工心肺離脱時に0.41 ± 0.18と有意差は認めなかったが,MUF終了時は0.28 ± 0.12と有意に低下していた(p = 0.016).【結語】(1)AV-MUFと比較してVV-MUFはより生理的な血行動態が維持できる.(2)VV-MUFにおいてもTXB2,IL-6,IL-8 等のchemical mediatorを除去し,さらに,術直後の肺動脈圧を低下させ,肺高血圧症を合併する小児開心術症例に有用である可能性がある.

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