P-II-F-7
当院におけるASD無輸血手術成績
慶應義塾大学医学部小児科1),慶応義塾大学医学部心臓血管外科2)
林 拓也1),古道一樹1),仲澤麻紀1),土橋隆俊1),福島裕之1),山岸敬幸1),饗庭 了2)

【目的】当院におけるASD手術を検討し,開心術を無輸血で安全に行うことができる条件を考察する.【対象】2002年 7 月 1 日~2004年12月31日までに当院でASD閉鎖術を行った34例.男女比20:14.PAPVC合併 4 例,PS合併 5 例.【結果】手術時年齢は平均 6 歳 4 カ月,手術時体重は平均20.8kg(6~64kg).術式は胸骨正中切開(一部の症例では小切開法)による直接縫合25例,パッチ閉鎖術 2 例直接縫合 + 肺動脈弁形成 4 例,直接縫合 + 右室流出路形成 1 例,Vagas法 2 例であった.術前のヘモグロビン(Hb)値,ヘマトクリット(Ht)値は平均13.6,38.1,術後のHb値,Ht値は平均11.9,35.3であった.輸血は 2 例に必要となり,体重8.8kgのNoonan症候群症例および体重13.5kg,原因不明の溶血性貧血を認めた症例だった.退院時のHb値が10以下の症例13例に鉄剤を投与した.いずれの症例も臨床的に貧血の症状を認めず,術後 3 カ月のHb値は11~12に増加した.また,神経学的所見を含め,合併症を認めた症例はなかった.【考察】当院におけるASD閉鎖術では,体重が 6kg以上の症例の輸血回避率95%だった.輸血を必要とした症例は,出血・貧血の素因を有する症例だけであった.当院では,人工心肺使用中,Ht値を20以上に維持している.この条件下では,通常,体重 6kg以上あればASD閉鎖術を無輸血で安全に行うことが可能と考えられた.

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