P-II-F-11
当院で施行した両側肺動脈絞扼術症例の検討
あいち小児保健医療総合センター心臓外科1),あいち小児保健医療総合センター循環器科2)
佐々木滋1),前田正信1),岩瀬仁一1),水野明宏1),安田東始哲2),福見大地2),沼口 敦2),長嶋正實2)

【目的】両側肺動脈絞扼術(bil PAB)は現在左心低形成症候群(HLHS)などに対して生後間もない時期の肺血流の制御方法として広く用いられている.これまで当院で施行したbilPAB症例の疾患,付加手術・次段階手術の内容などを分析し妥当性を検討する.【対象,経過】これまで施行したbil PAB症例は 4 例であり,内訳は次の通り.症例 1:HLHS,scimitar症候群,左横隔膜弛緩症,症例 2:HLHS,severe TR,症例 3:HLHS(AS hypoplastic arch),症例 4:IAA(typeA),VSD,small LV.bil PAB施行時期は生後 3~20日までである.生後20日にbil PABを施行したのは同時に左横隔膜の縫縮術を施行した症例 1 のみであり,他の合併奇形のため手術時期を慎重に考慮したことによるもので他はすべて生後12日以内にbil PABを施行している.初回手術として両側の肺動脈を周径10mmにbandingし,全例術中 2DEにて3.5~4.0m/sのcontinuous flowとなっていることを確認した.症例 3 においてbil PAB施行翌日にductal shockとhypoplastic archであることによる上肢の低血圧を来し,肺動脈から右腕頭動脈へ 4mm PTFE graftによるbypass手術を施行している.さらにbil PAB施行後全例において下肢血流維持のためのプロスタグランジンからの離脱が困難であり,肺動脈基部から下行大動脈へ 6mm PTFE graftによるbypass手術を施行しプロスタグランジンより離脱可能となった.【結果,考察】bil PABはHLHSにおいて肺血流の制御に有効であるが,一方で動脈管の開存状態やarchの形状などに配慮し,上肢や下肢への安定した血流を得るための手術も早期に考慮する必要があると考えられる.

閉じる