P-II-F-12
当院で経験したTAPVR術後肺静脈閉塞(PVO)の検討
群馬県済生会前橋病院小児科1),群馬県済生会前橋病院心臓血管外科2),群馬県立小児医療センター循環器科3),群馬大学医学部小児科4)
下山伸哉1),篠原 真1),小野真康1),杉山喜崇2),石原茂樹2),鈴木尊裕3),小林 徹3),渡邉正之4)

【背景】総肺静脈還流異常症(TAPVR)術後の問題点にPVOがある.そこで当院で経験したTAPVR症例の術後PVOの成因につき若干の検討を加えた.【対象】1991年 3 月~2004年12月までに心内修復術を施行したTAPVR(heterotaxyは除く)32例で,病型はIa:15例,Ib:2 例,IIa:5 例,IIb:3 例,III:6 例,IIa + Ia:1 例である.手術方法はIおよびIII型がposterior approach,II型がcut back法であった.術後経過観察期間は 3~181カ月で,男児23例,女児 9 例であった.IIa + Iaの混合型の 1 例のみ右上肺静脈の還流異常を残した修復が,他の症例は完全修復が施行された.【方法】肺静脈の高度低形成のため手術死亡した 1 例を除く,31例に術後カテーテル検査を施行した.右室収縮期圧/左室収縮期圧(RVp/LVp),mean PApを測定し,左右肺動脈造影を行った.検査は術後 1 カ月~21カ月(平均5.7カ月)に施行した.【結果】31例中 7 例(23%)にPVOを生じており,7 例のRVp/LVp = 0.34~0.78(平均0.52),mean PAp = 15~44mmHg(平均25.2)であった.他の24例には,明らかなPVOは認められなかった.7 例の内訳は,術後 5 カ月時に心房中隔が吻合孔を圧迫したためPVOを生じたIb型の 1 例(A群).左肺静脈が垂直静脈に還流し,同部位での狭窄を伴っていた 2 例(B群).残り 4 例は,術後 1 カ月の時点で軽度のPVO(RVp/LVp = 0.5,mean PAp = 28mmHg)を認め,その後PVO(RVp/LVp = 1.1,mean PAp = 76mmHg)が進行した(C群).A群およびC群の 5 例中 4 例にPVO解除術を施行した.【結語】TAPVR術後PVOの成因を 3 群に分類した結果,A,C群はPVO解除術が可能であるが,B群は解剖学的に困難と思われた.

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