P-II-F-13
TAPVC(IIa)に対する左房後壁転換術 2 例の経験
大垣市民病院胸部外科1),大垣市民病院小児循環器新生児科2)
石本直良1),玉木修治1),横山幸房1),横手 淳1),六鹿雅登1),中島正彌1),田内宣生2),倉石建治2),西原栄起2)

【はじめに】根治術を施行したisolated TAPVC 26例中,IIa型は 4 例で,最近の 2 例に対しては山岸らの報告による左房後壁転換術を行い良好な結果を得たので報告する.症例 1:生後43日,体重4.0kg,男児.症例 2:生後 3 日,体重2.8kg,女児.【手術】心停止下にRAを切開,まずASD下縁からCSの三尖弁側に向かって切開をいれた.LA wallとcoronary sinus wallを確認しながら先の切開線をLA後壁(CSの上壁)へと延長した.さらにこの切開線を頭側に延長した後に,LAA入口部分でinverted J型に迂回させ今度は尾側に切開を延長した.このように作製した有茎flapを用いてCS開口部を閉鎖した.続いてこのflapをRA側に引き上げてCSからの縫合線と連続するようにASDを閉鎖した.体外循環時間,大動脈遮断時間は症例 1 ではそれぞれ82分,27分,症例 2 では92分,44分であった.【術後経過】2 例ともにPH crisisもなく良好に経過した.術後のUCGにおけるPV orificeでの流速,圧較差は症例 1 では0.63m/s,1.60mmHg,症例 2 では0.50m/s,1.00mmHgと計測された.また,カテーテル検査における肺動脈圧,Pp/Psは症例 1 では23/8(11)mmHg,0.26,症例 2 では30/12(19)mmHg,0.25と良好でPVO,PHは認められなかった.それぞれ第21病日,第17病日に軽快退院した.【考察】TAPVC(IIa)2 例に対して左房後壁転換術を施行した.本法は異物を使用することなくPV-LA間に十分な交通口が確保でき,術後PVO発生の回避に有効であると思われた.また,flapの性状等から生後まもなくの患児に対しては不安もあったが,注意すれば十分施行可能と思われた.

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