P-II-F-16
付加的肺動脈血流を伴う両方向性グレン手術の検討
和歌山県立医科大学第一外科1),和歌山県立医科大学小児科2)
平松健司1),岡村吉隆1),小森 茂1),西村好晴1),森 秀暁1),林 弘樹1),金子政弘1),上村 茂2),鈴木啓之2),武内 崇2)

【目的】PA Indexの低い両方向性グレン手術(BDG)に際し付加的肺動脈血流(APBF)を残した場合の肺動脈の発育促進効果について検討した.【対象と方法】1992年より教室で機能的単心室症例に対しBDGを行った症例のうち急性期死亡を除いた10例を対象に,APBFを伴わない対象群(n = 6)と主肺動脈よりAPBFを残すまたはBTシャント(3.5mm)を残したAP群(n = 4)の 2 群に分け比較検討した.症例の内訳はSV 6 例,HLHS 2 例,PPA 1 例,cor. TGA 1 例.手術時月齢は対象群6.3カ月,AP群11.3カ月で有意差なし.BDG前後でのSpO2(%),心カテ上のmean PAP(mmHg),PA index,VEDP(mmHg),心エコー上のVIDs(% N),VFS(%),AVVR(1~4度)の推移を追求した.なお,BDG後経過観察期間は 5~144(平均38)カ月.なお,遠隔死亡は144カ月後に心不全死したHLHSの 1 例のみ.2 例はFontanに到達しており,残り 7 例は現在Fontan待機中.【結果】SpO2はBDG前後では対象群で76から80%へ,AP群で70から85%*へ上昇した.mean PAPは対象群で12から14mmHgへ,AP群で 8 から12mmHgへ上昇したが両群間に有意差なし.PA indexは対象群で225から180へ減少したのに対し,AP群では179*から212へ増加した.VEDPは対象群で 6 から 7mmHgへ,AP群で 5 から 4mmHg.VIDdは対象群で136から129%と減少したのに対し,AP群では112から113%へと変化せず.VFSは対象群で32から32%,AP群で33から37%.AVVRは対象群で2.2から2 へ変化なく,AP群で0.3*より2.1#と有意に増加していた(*= p < 0.05 vs対象群,# = p < 0.05 vs BDG前).【考察と結語】対象群ではBDG後PA indexが減少していたが,AP群ではむしろ増加する傾向を示しかつmean PAPは対象群と比較し術後有意差を認めなかった.BDGに際しPA indexの低い症例に対して適切なAPBFを残すとmean PAPを有意に上昇させることなく肺動脈発育促進が期待できると考えられた.しかしAP群では術後AVVRが増加し心室容量が減少しない傾向を認めFontanの時期に注意を要する.

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