P-II-G-2
大動脈弓低形成,大動脈縮窄を伴うTaussig-Bing奇形に大動脈弓再建術,肺動脈絞扼術の術中に左心耳からのBASを施行した極低出生体重児の 1 例
昭和大学横浜市北部病院循環器センター1),岡山大学大学院医歯学総合研究科心臓血管外科2)
松岡 孝1),加藤源太郎1),上村 茂1),廣畑裕子1),曽我恭司1),佐野俊二2)

【はじめに】先天性心疾患の手術成績は飛躍的に改善している.しかし,低出生体重はそれ自体が予後不良因子である.またTaussig-Bing奇形に大動脈離断や大動脈縮窄を伴う場合は手術成績は明らかに低下する.今回われわれは,同症の極低出生体重児を経験し良好な経過を得たので,術中BASを併用したpalliation手術法の有用性につき報告する.【症例】在胎35週 4 日,出生体重1,264g,女児.生直後心エコー検査にて上記疾患と診断.動脈管開存を目的にlipo PGE1を開始した.同時にクベース内に窒素ガスを用い肺血流量をコントロールし,生後 1 週間で人工呼吸管理下で窒素ガス療法(最低FiO2 = 0.16)を行った.日齢36,体重1,486gで大動脈再建術,肺動脈絞扼術を施行した.術後,心房間左右短絡が減じるため,心房中隔裂開術が必要と判断した.経皮的心房中隔裂開術(BAS)は大腿静脈閉塞の可能性もあり,術中のBASを選択した.X線透視,超音波ガイド下に 4Fr fogatyを左心耳より挿入し 2mlのバルーンで施行した.スリット状であった心房間交通は4.5mmまで拡大できた.手術翌日には人工呼吸器から離脱できた.PaO2 60~100torrと高肺血流であったが,利尿剤にて心不全を管理でき,日齢99,2,588gで退院となった.現在,修正 3 カ月で神経学的に異常は認めない.【考察・結語】低出生体重児の術後成績は早期死亡15~40%の報告がある.術前の児の状態などからより侵襲の少ない手術を選択しなければならない場合もある.外科的にBASを行うためには人工心肺が必要であり,低体重児に人工心肺を施行する際にはさまざまな工夫が必要となる.しかし本症例のように心耳からカテーテルを挿入しBASを行うことにより,侵襲は軽減させることができた.極低出生体重児における治療戦略の一つとして有効な手段と考えられた.

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