P-II-G-4
左大動脈弓,右側下行大動脈を呈した大動脈弓離断の 1 例
東京慈恵会医科大学小児科1),東京慈恵会医科大学心臓外科2)
河内貞貴1),齋藤亮太1),寺野和宏1),藤原優子1),衛藤義勝1),中村 賢2),黄 義浩2),松村洋高2),森田紀代造2)

【背景】大動脈弓離断は時に重症例において,心エコー検査のみで手術を施行されることがある.今回われわれは,心エコー検査のみでは誤った開胸方針を選択する可能性があった症例を経験した.【症例】日齢10男児.在胎39週0日,出生体重3,712g,Apgar score 8/9 にて出生.日齢10に哺乳力の低下,多呼吸認めたため近医を受診したところ,心室中隔欠損および心機能低下を指摘され,緊急搬送となった.入院時心エコー検査にて,心室中隔欠損,大動脈弓離断type A,および動脈管血流を認めずductal shockと診断し,PGE1製剤の投与,心不全治療等にてショック状態から回復した.全身状態安定し,術前の形態評価としてmultidetector-row CT(以下MDCT)を施行した.三次元構築にて左大動脈弓,右側下行大動脈を呈した大動脈弓離断と診断,さらに心血管造影検査にて,MDCTと同様の所見が得られた.心エコー診断当初,側開胸による大動脈再建術および肺動脈絞扼術を予定していたが,側開胸では,右側下行大動脈への到達は距離的に不可能であると判断した.胸骨正中切開により,一期的に大動脈弓尾側と右側下行大動脈の端々吻合術,および心室中隔欠損閉鎖術を施行する方針とした.正中切開による大動脈弓の端々吻合は比較的容易であった.しかし術後吻合された大動脈弓が左主気管支を圧排し高血圧になると気管狭窄による換気不全を起こして,呼吸管理に一時的に難渋する経過があった.【考察】本症例はまれな大動脈形態を呈した大動脈弓離断であった.大動脈弓離断における,形態診断として,MDCTは有用であった.本疾患においては,下行大動脈の走行異常の有無にも注意をする必要がある.たとえ,端々吻合が可能な形態であってもその走行異常により気管を圧排する可能性があり,気管の圧排を回避するような術式を選択する必要がある.

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