P-II-G-5
中心肺動脈形成が有効であった主要肺動脈体動脈側副血行路の 1 例
神奈川県立こども医療センター循環器科
道和百合,上田秀明,中埜信太郎,林 憲一,康井制洋

【症例】日齢18,男児.【妊娠分娩歴】妊娠経過中特記事項なし.妊娠24週,胎児超音波検査で両大血管右室起始(DORV),主要肺動脈体動脈側副血行路(MAPCAs),肺動脈閉鎖(PA)を指摘され,当院に転院.妊娠34週,羊水染色体検査は46,XY.【現病歴】在胎38週 4 日,自然頭位分娩で出生.Apgarスコア 9 点(1 分).出生体重2,492g.呼吸障害なし.全身のチアノーゼと末梢冷感を認め,[S.D.N],DORV,MAPCAs,PA,TRと診断した.日齢 3 からMAPCAsと思われる収縮期性雑音を聴取するようになったが心不全症状を認めなかった.日齢 7 から経皮的酸素飽和度モニターが90%から80%と低下するようになり,肺血流低下を疑った.日齢18,橈骨動脈造影を施行.中心肺動脈は 1mm未満と低形成を認めた.中心肺動脈の発育を促す目的でPGI2内服薬および経鼻酸素吸入療法を開始したが,啼泣後に徐脈を伴うチアノーゼ発作を 2 回起こし,その度に人工呼吸器管理を要した.日齢65,右肺動脈のシャント手術を施行.生後 5 カ月に施行した血管造影では,右肺動脈の発育を認め,続いて左肺動脈形成術を施行することができた.【考察】MAPCAは,大動脈から起始して末梢肺動脈に接続する側副血管で,その血管壁は,脆弱な異常血管からなっている.強いチアノーゼ発作を来す主要肺動脈体動脈側副血行路にもかかわらず,肺動脈形成によって良好な肺動脈の発育を得たので報告した.

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