P-II-G-11
無脾症候群における3D-CTを用いた治療戦略
神奈川県立こども医療センター循環器科
林 憲一,中埜信太郎,上田秀明,康井制洋

【背景】無脾症候群(ASP)の心奇形は,予後に大きく影響する肺動静脈形態を呈することが多い.【目的】ASPの治療戦略におけるmultislice helical CTによる三次元再構成(3D-CT)の臨床的有用性を検討する.【対象】1998年 1 月からの 6 年間に出生したASP 30例〔うち 3D-CTを施行し得たのは13例(当院での 3D-CT臨床導入は2001年 2 月より).計22回分の 3D-CT所見〕.【方法】CTの検出器は 4 列.対象を 3D-CT施行例(ASP 3D+,n = 13)および未施行例(ASP 3D-,n = 17)に分類し,後方視的に検討した.【結果】(1)3D-CT所見(ASP 3D+群)(a)PAおよびPV形態:特殊なPA形態は 6/13(non-confluent PA:3,pulmonary coarctation:2,MAPCA:2)であった.一方,特殊なPV形態も 7/13(修復を要するTAPVC:6,PAPVC:1)と高率であった.(b)施行時年齢:初回施行時年齢は平均0.21yで,最小日齢は 3dであった.全例,合併症や臨床症状の増悪はなかった.(2)3D-CTと手術(a)施行時期と手術:初回姑息術の前後に施行する例が多かった〔初回手術前後 14/22(64%)〕.(b)3D-CT施行に関連した手術の内訳:全19件.PAあるいはPVの同時修復例が53%と多かった〔BT shunt(BCPS)のみ:9(47%),BT shunt(BCPS)+ PA plasty:5(26%),BT shunt + PA plasty + TAPVC repair:3(16%),BCPS + TAPVC repair 2(11%)〕.(3)3D-CT画像の評価:他の画像検査に比べ,PAは狭窄部を含む中枢側の評価に,PVではさらに末梢の評価でも有用であった.生存例のBCPSまでの総血管造影回数の平均は,ASP 3D-群4.6回からASP 3D+群2.4回と減少した.(4)予後:ASP 3D-群の死亡率は47%(8/17)であったが,ASP 3D+群は31%(4/13)でやや改善を認めた.生存全18例は,すべてBCPS以降へ到達した(BCPS:9,TCPC:9).【結論】検出器数の少ない 3D-CTでも,ASPに生じうる肺動静脈形態を低年齢より的確に評価可能である.低侵襲で情報量の多い3D-CTを早期より導入する治療戦略は,より良い臨床的効果を期待できる.

閉じる