P-II-G-13
消化器疾患を合併したheterotaxy症候群の特徴と心疾患の経過
大阪府立母子保健総合医療センター小児循環器科1),大阪府立母子保健総合医療センター心臓血管外科2),大阪府立母子保健総合医療センター小児外科3),中島クリニック小児科循環器科4)
那須野明香1),萱谷 太1),角由紀子1),北 知子1),稲村 昇1),盤井成光2),川田博昭2),岸本英文2),窪田昭男3),中島 徹4)

【背景】心疾患を持つheterotaxy症候群(HS)の合併する消化器疾患が心疾患の経過・治療に影響を及ぼすことがある.【目的】消化器疾患を合併するHSで心疾患・消化器疾患の治療,経過,予後を調べる.【対象】1981~2004年当院で診療した心疾患を持つHS 88例のうち,消化器疾患を合併する17例.【方法】心疾患と消化器疾患,それぞれの手術,相互の関係について検討した.【結果】合併した消化器疾患は,食道裂孔ヘルニア 7 例,十二指腸閉鎖 2 例,十二指腸狭窄 1 例,腸回転異常 7 例,胃軸捻転 1 例,低位鎖肛 1 例,Hirschsprung病 1 例,横隔膜ヘルニア 1 例であった(重複あり).(1)食道裂孔ヘルニアは 7 例のうち 5 例で症状を認めた.胃食道逆流の症状が軽度の場合自然軽快したが,高度の場合体重増加不良や肺静脈狭窄の増強の原因となり 2 例で手術が必要であった.手術に際しては通常のNissen手術は解剖学的構造上しにくく工夫を要した.(2)十二指腸閉鎖および狭窄は,生後早期(日齢 1~1 カ月)に手術が必要となり,全身麻酔・人工呼吸管理・水分バランスの維持など,術中術後の循環管理に注意を要した.(3)腸回転異常は 7 例中 5 例が無症状で経過したが,1 例は日齢 1 に嘔吐・腹部緊満の症状で軸捻転が疑われた.1 例は10カ月時突然の嘔吐不機嫌で発症し胃軸捻転と診断された.いずれも緊急手術を要した.(4)Hirschsprung病は生後 3 週で診断に至り手術を施行した.経腸栄養の開始が遅れ体重増加不良があったが,術後体重が増加し始めた 2 カ月ころ肺動脈狭窄が進行した.(5)低位鎖肛の例ではろう孔あり,排便障害なく経過していることより心臓の最終手術の後,修復する予定とし現在経過観察中である.(6)横隔膜ヘルニアはHFO,NOを使用するも酸素化が保てず,肺動脈が細く外科的介入ができず,日齢 4 死亡した.【まとめ】HSに合併する消化器疾患は,臓器による圧迫,腹部膨満や手術などの侵襲が心疾患の経過にも影響することがあり注意が必要である.

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