P-II-G-14
重症拡張型心筋症を伴う修正大血管転位に対し,β遮断薬治療および外科手術治療が奏功した 1 例
沖縄県立那覇病院心臓血管外科1),沖縄県立那覇病院小児科2)
長田信洋1),久貝忠男1),安元 浩1),宗像 宏1),仲本雅哉2),天久憲治2)

【目的】著しい心機能低下で手術不可能と診断されたcorrected TGA,VSD,PAに対し,β遮断薬治療とRastelli型手術を行い,心機能が著明に改善した症例を経験したので報告する.【症例】10歳男児,体重20.8kg,全内臓逆位.生後 2 カ月時に右mBT shunt,2 歳 5 カ月時に左mBT shuntを施行.3 歳 2 カ月時から心不全出現.3 歳 6 カ月時に県外の小児専門病院で心臓カテーテル検査を行ったが,拡張型心筋症で心機能が著しく低下しており(RVEDV 344%N,RVEF 16.3%,LVEDV 324%N,LVEF 37.4%),手術不可能と診断される.その後,心不全の治療にカルベジロール(2mg~10mg/日)を開始したところ,徐々に心不全が改善.9 歳 8 カ月時の心臓カテーテル検査では,RVEDP 19mmHg,LVEDP 12mmHg と拡張障害は残存するものの,RVEDV 105%N,RVEF 71%,LVEDV 142%N,LVEF 65%と心拡大および心収縮能は改善しており,根治手術適応となった.【手術】LV切開.VSDは径17mmと大きく,房室弁下はECD様で筋性組織を欠いており,房室弁の変形を来さないようVSDのパッチ閉鎖を工夫した(膜性中隔部の糸かけは低位置のT弁輪に沿って行い,筋性中隔部はDeLeval法を用いた).LV-PA conduitは 3 弁付き16mm PTFE graftを用いた.【結果】術後DOA/DOB最大使用量は 5γ/kg/minで,4 日目にoffとなった.一方,術後 7 日目のCTRは64%であったが,10日目には71%まで拡大したのでアーチスト 2mg/日を再開.17日目には60%まで改善し,その効果が確認された.術後 1 カ月時の心カテ圧測定ではRA(8),RV 89/EDP 12,LA(9),LV 38/EDP 10,PA 25/11(17)mmHgで,作製した肺動脈弁の逆流は全くなく,LVEF 56%,RVEF 63~77%であった.【結語】β遮断薬治療と正確な外科手術により,術前予後不良と診断された症例の心機能を大きく改善させることができた.

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