S-III-7
Norwood手術におけるBT shuntとRV-PA conduitの比較─RV-PA conduitの有用性と問題点─
国立循環器病センター心臓血管外科1),国立循環器病センター小児科2)
鍵崎康治1),八木原俊克1),上村秀樹1),萩野生男1),石坂 透1),康 雅博1),越後茂之2)

HLHSの救命率向上のために,Norwood手術における補助手段の改良,RV-PA conduit(RVC)や両側肺動脈絞扼術の導入がなされている.当施設における過去10年間の急性期成績を検討した.一方,RVCは早期に導管狭窄を来しやすく第二期手術が早期乳児期に必要となることが懸念されるため,BT shunt(BT)とRVCとの第二期手術における影響を比較した.【対象と方法】1995年以降に施行したNorwood 手術は33例(手術時日齢6.4 ± 4.4日,体重2.7 ± 0.4kg).1997年に人工心肺の低充填量化,循環停止を避ける下行大動脈送血を開始,1999年 RVCの導入,2001年MUFの導入を行った.全体でBT 23例,RVC 10例で,RVC導入後はBT 10例,RVC 10例であった.RVCは低体重や低心室機能,房室弁逆流などの危険因子を有する症例に用いた.【結果】2 年ごとのNorwood耐術率は,33%,14%,33%,67%,78%と近年著しく向上していた.RVC導入後の20例ではBT耐術率70%,RVC耐術率 60%で,適応を選んだBTの耐術率は良好であった.bidirectional Glenn(BDG)に到達した10例のBDG前の各種指標をBT群(7 例)とRVC群(3例)とで比較検討すると,BDG施行年齢はBT群 6.5~12カ月(8.6 ± 2.1カ月),RVC群 4~5 カ月(4.7 ± 0.6カ月)と有意にRVCで低く,SaO2(%),Qp/Qs,PAI(mm2/m2)はそれぞれBT群:76 ± 5,1.14 ± 0.46,276 ± 150,RVC群:72 ± 7,1.07 ± 0.73,266 ± 77と有意差はないがRVC群で低い傾向にあった.Fontan到達率はBT群 6/7 例,RVC群 2/3 例といずれも良好であった.【まとめ】Norwoodの手術成績は手術方法や補助手段の進歩により大きく向上しつつあるが,今後さらなる成績向上には急性期の循環虚脱を予測してのelectiveなECMOなどの補助手段の適応が求められると考える.RVCは危険因子を有する症例に対するNorwood耐術率の向上に寄与していると考えられたが,BTに比し肺血流量が少ない傾向にあり,有意に早期にBDGを施行する必要があった.

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