K-VIII-4
肺高血圧における運動負荷試験による心拍出量の推定
国立循環器病センター小児科
濱道裕二,竹川剛史,林  環,吉村真一郎,山田 修,越後茂之

【背景】肺高血圧において心拍出量は予後を規定する因子である.心臓カテーテル検査による心拍出量の測定は予後判定に有意義であるが,侵襲を伴う.運動負荷試験においてVE/VCO2 slopeは運動中の心拍出量の増加が不十分な場合に増大し,近年心不全の独立した予後因子として用いられている.またVE/VCO2 slopeは亜最大負荷で生理的に決定することができる.【目的】VE/VCO2 slopeが心拍出量(QsI)の増悪を推定するのに有用か,後方視的に検討.【検討 1】対象はカテーテル検査および同時期に運動負荷試験を試行した10~30歳(中央値14歳)の 9 例(計15回).原発性肺高血圧 8 例,Eisenmenger症候群 1 例.VE/VCO2 slopeとQsI(l/min/m2)との相関を検討.さらに最高酸素摂取量(pkVO2),運動持続時間(Ex. T)とQsIとの相関を検討.【結果 1】VE/VCO2 slopeは中央値43.7.QsIは中央値3.0.VE/VCO2 slopeとQsIは有意に相関(p = 0.010,r = 0.63).pkVO2もQsIと有意に相関(p = 0.012,r = 0.62).Ex. TとQsIには有意な相関はなし.【検討 2】前述のうち治療の開始前後,治療の開始以後経過中に運動負荷およびカテーテル検査を 2 回施行した 6 例.治療はエポプロステノール持続静注 5 例,ベラプロストナトリウム内服 1 例.VE/VCO2 slopeの増減の変化と,QsIの増減の変化が対応しているか検討.【結果 2】VE/VCO2 slopeとQsIの増減は有意に対応(p = 0.047).pkVO2およびEx. Tの増減とQsIの増減は有意に対応せず.【結語】VE/VCO2 slopeは被験者の運動努力に依存せず,算出にも主観の入る余地のない指標である.肺高血圧の心拍出量の増悪の推定に有用と考える.

閉じる