E-III-14
蛋白漏出性胃腸症の在宅療法─連続ヘパリン皮下注射―
東京女子医科大学循環器小児科
工藤恵道,中澤 誠,森 善樹,奥村謙一

Fontan術後の合併症に蛋白漏出性腸症(protein loosing enteropathy:PLE)があり,その予後は非常に悪い.PLEの治療法は確立されておらず,その一つにヘパリン投与がある.今回,Fontan術後にPLEを発症した 2 例において,在宅でヘパリン皮下注を行い効果を認めたので報告する.【症例 1】15歳の男児.多脾症・完全型心内膜床欠損で,4 歳時に肺動脈絞扼術,12歳時にFontan術を行った.12歳時,顔面浮腫および腹部膨満が出現,アルブミン(Alb)値2.6mg/dl,99mTc HSA-Dで腸内に集積が認められ,α1-antitripsin排泄52ml/日と高値を示し,PLEと診断した.その後,Alb補充療法,ヘパリン持続点滴治療などで入退院繰り返した.今回,入院にてヘパリン100単位/kg/day連日皮下注射を開始した.その後,在宅で140単位/kg/dayに増量し,症状の改善,Alb値 3.6~4.0mg/dlを保っている.【症例 2】7 歳の男児.右室型単心室・肺動脈狭窄症で,2 歳時にBAS,4 歳時にFontan術を行った.1 年後に顔面浮腫・腹部膨満が出現,Alb値2.7mg/dl,99mTc HSA-DにてPLEと診断した.その後,アルブミン補充療法などで入退院繰り返した.今回,ヘパリン皮下注射療法を導入,Alb値4.6mg/dlと維持できたので,その後はヘパリン100単位/kg/dayで在宅治療に移した.浮腫は改善しているが,Alb値は2.1~2.8mg/dlである.この在宅療法は,皮下注射に伴う感染・衛生や施行技術の問題,連日針を刺すという苦痛などの問題がある.しかし安定したAlb値,浮腫増悪の防止,患者のADLの向上,などを考慮すると注目すべき治療である.

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