E-III-15
スピロノラクトン大量投与により改善が認められたFontan術後蛋白漏出性胃腸症(protein-losing enteropathy:PLE)
新潟市民病院新生児医療センター1),新潟市民病院小児科2),新潟市民病院心臓血管外科3)
沼野藤人1),佐藤誠一2),坂野忠司2),金沢 宏3)

【症例】14歳男子.【原疾患】ivemark synd.,dextrocardia,DORV,TGA,PS,PAPVR.【既往歴】1 カ月時にrt. BT shunt,2 カ月時にlt. BT shuntが施行された.5 歳 3 カ月時にBDGが施行された.術後の中心静脈圧は16~18mmHgであったが,5 歳10カ月時にFontan手術が施行された.術後に腹水が多量に出現し,利尿剤を大量に使用した.【現病歴】術後 8 年 6 カ月より下腿浮腫が出現し,術後 8 年 9 カ月に尿量減少,下腿浮腫の増悪,低蛋白血症(TP 4.2g/dl,Alb 2.1g/dl)を認め入院した.便中α-1ATクリアランス,消化管漏出シンチにてPLEと診断した.心臓カテーテル検査では中心静脈圧の上昇(21~22mmHg)を認めたが,有意な狭窄所見は認めなかった.心房内バッフルから多量のleakと,中心静脈からの膨大な側副血行の存在から外科的治療は行わなかった.PLE診断後よりヘパリン持続静注,ステロイド投与を行ったが蛋白漏出は改善しなかった.次いでスピロノラクトン(SP)大量投与(150mg/日)を開始したところ低蛋白血症,臨床症状は改善し,退院が可能となった.【退院後経過】退院後 2 カ月(投与開始後 3 カ月)よりSPの副作用である女性化乳房が出現し,SPを減量(75mg/日)した.血清アルドステロン(ALD)値の上昇とともに血清蛋白値の減少,下痢,尿量減少が出現したが,抗ALD薬であるトリアムテレンを併用することによって再びALD値は減少し,血清蛋白の上昇,症状の改善を認めた.【考察】ALDは心筋・血管の線維化を起こし圧受容器異常を来すことが知られており,血管に対する直接侵襲作用もあるといわれている.本症例ではALD値が血清蛋白値と相関して変化し,蛋白漏出機序で,消化管粘膜血管や腸管リンパに対してALDが関与している可能性が示唆された.

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