E-III-23
小児の洞不全症候群の治療方針の検討
茨城県立こども病院小児科1),茨城県立こども病院心臓血管外科2)
塩野淳子1),岩崎陽子1),磯部剛志1),杉森治彦2),五味聖吾2),吉村幸治2),阿部正一2)

【はじめに】洞不全症候群(以下SSS)の治療は,ペースメーカ植え込み(以下PMI)が中心であるが,無症状の場合はその適応が難しい.また電気生理学的検査の適応についても迷うことがある.当院におけるSSSの背景とその治療をまとめた.【対象と方法】1995年 1 月~2004年12月の10年間に,当院でSSSと診断した 7 例を対象とし,診療録から後方視的に検査所見と治療を検討した.SSSの診断はモニター心電図,ホルター心電図で年齢相当の心拍数と比較して徐脈が持続するものとし,原因の明らかな洞性徐脈(薬剤性,神経性無食欲症など)は除外した.2 例は徐脈頻脈症候群であった.診断時年齢は 0 カ月~13歳(中央値 3 カ月),性別は男 2 例,女 5 例であった.経過観察期間は 1 年 1 カ月~6 年 3 カ月であった.【結果】心臓基礎疾患のあるものは 5 例で,内訳は多脾症候群が 2 例(それぞれVSD,AVSD術後),総肺静脈還流異常術後 2 例,VSDおよびASD術後が 1 例であった.症状があったのは 3 例で,失神が 2 例(いずれも徐脈頻脈症候群),心不全が 1 例(多脾症候群,AVSD)であった.このうち 2 例はPMIを施行したが,1 例は家族の強い希望で施行しなかった.電気生理学的検査(overdrive suppressionテスト)は 3 例でのみ施行し,1 例はPMIの適応なしと診断した.無症状の 2 例で交感神経刺激剤の内服を行った.検診発見例は無症状であったが,ホルター心電図を繰り返し,SSSと診断した.【まとめ】(1)有症状例はPMIの適応である.(2)検診で軽症例が発見される可能性があり,慎重な経過観察が必要と思われる.(3)成人におけるPMIのガイドラインはあるが,小児については見当たらない.小児におけるPMIのガイドライン作成が望まれる.

閉じる