【緒言】前回，VAT mapをP波に応用した心房興奮等時線図，体表面atrial activation time（AAT）mapを報告し，非侵襲的に心房興奮伝播過程を解析した．【目的】今回異所性心房調律のAAT mapとisopotential map（等電位図）を比較し，興奮伝播に加えて局所電位変化につき検討した．【方法】J Electrocardiol. Vol. 22 p27データを新たに解析した．イヌの右房下部，左房上部・下部，左心耳で心外膜電極ペーシングをし，P波開始から 2msecごとに体表面単極誘導心電図87点から等電位図を作成，AAT mapと比較した．【結果】洞調律のAAT mapでは興奮が右肩背上部に始まり，右前胸上部から正中へP波開始から20msec前後で伝播した．左前胸部へは20msec前後で上部から伝播し，左側胸部下部，背部の興奮が遅れた．等電位図では初めに前胸正中部極大が出現し20msecを過ぎて左前胸部に移動，右房興奮から左房興奮への移行を表すと考えられた．右房下部刺激では興奮は右前胸部および背部下部から始まり，左前胸部中上部が最も遅かった．等電位図では，前胸部極大が40msec前後で左側胸部極大に移動した．左房上部刺激では左右前胸部および背上部にほぼ同時に興奮が始まり，その後興奮伝播は下降し右前胸部が最も遅かった．この等電位図では前胸部および側胸部極大が並列してみられ，それぞれ右左心房興奮を表した後，右極大が残った．左心耳刺激では左側胸部中部から興奮が始まり，右前胸部および背部に興奮が広がり，右前胸部中上部に最も遅く興奮が到達した．等電位図では背部に出現した極大が40msec過ぎに右前胸部に移動した．左房下部刺激では，左側胸部下部から興奮が始まり，右前胸部下部への興奮到達が最も遅れた．等電位図では左前胸部の極大（左房興奮電位）から右前胸部極大（右房興奮電位）に移動した．【結語】体表面AAT mapおよび等電位図により，異所性起源調律においても心房興奮伝播と左右心房興奮電位の変化や移動を解析できた．