E-III-26
術後早期にみられた頻脈性不整脈の治療経験
九州厚生年金病院小児科1),九州厚生年金病院心臓血管外科2)
山脇かおり1),城尾邦隆1),渡辺まみ江1),弓削哲二1),岸本小百合1),山村健一郎1),梶原敬義2),井本 浩2),瀬瀬 顯2)

【はじめに】術後早期の不整脈はしばしば難治性で,治療に苦慮することがある.2003年以降 2 年間の当院での開心術241例・非開心術69例のうち,術後 2 週間以内に発症し小児循環器科医が治療に協力した頻脈性不整脈は 5 例であった.これら自験例の診断および治療について考察する.【症例】(1)IAA(B),VSD,del22q11.2.日齢35に二期的根治術.ICU入室時より200~250/分の頻脈が出現.一時ペーシングリードを用い接合部頻拍(JET)と診断.Mg・ジギタリス・ニフェカラントは無効で,血圧低下し開胸心マッサージを要した.発症23時間後にアミオダロン点滴静注を開始.心房ペーシングを併用して発症120時間後に洞調律に復帰.(2)TOF.2 歳 1 カ月時根治術.術中より180/分のJETあり.心房・心室リードを用いて房室解離を証明.リドカイン・overdrive pacingは無効.術後 4 日目にニフェカラントを開始し,心房ペーシングを併用して投与開始35時間後に洞調律に復帰.(3)TOF,absent PV.日齢56に根治術.術中より200~250/分のJETあり.ICU入室後に血圧低下し開胸心マッサージ施行.ニフェカラント投与後30分で継続するJETは停止し血行動態は安定した.(4)SRV,TAPVC3(術後),無脾症.1 歳 1 カ月時に右mBTシャント術.麻酔導入時・ICU入室後にPSVTが断続的に出現.鎮静・ATPに加えてジギタリス急速飽和を行い発症13時間後に消失.(5)TGA 1.日齢19にJatene手術.術後10日目にF rate 440/分の 2:1 common type AFを発症.直流通電は一過性効果しかなく,ジギタリス静注と鎮静で発症 2 時間後に洞調律に復帰.【考察】術後早期には特にJETの発症が目立った.診断には一時ペーシング用リードや食道誘導が有用で,治療には心機能抑制の少ない 3 群抗不整脈薬が選択された.術後早期の不整脈は,不安定な血行動態を破綻させうる危機的状況である.迅速な診断と治療が必要であり,心臓外科医と小児循環器科医の協働が望まれる.

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