E-III-30
小動物疾患モデルを用いた生体臨床心臓電気生理学検査法の確立と応用
東京医科歯科大学医学部附属病院小児科1),東京医科歯科大学難治疾患研究所生態情報薬理分野2),フクダ電子株式会社3)
脇本博子1),土井庄三郎1),江村 隆3),佐々木章人1),泉田直己1),古川哲史2)

【背景】心室負荷時での催不整脈性には,心室筋のストレッチ等による電気的な変化が推察されるが,その詳細は不明である.その機序の解明には,従来,イヌ,ヒツジ,ブタ等大・中型の実験動物が使用され,マウス,ラット等小動物を用いた研究はex vivoに限られていた.これらの小動物では遺伝子操作等各疾患モデルの作成が可能であり,心負荷モデルの検討にも大変有用である.【目的】近年開発されたマウスのin vivo心臓電気生理学検査法(EPS)を発展させ,これまで報告のないラットへの応用を確立し,各種心疾患モデルの心臓電気生理学的特性や催不整脈性を検討する.【方法】10週齢の正常S-Dラット(n = 25)に体表面 6 誘導心電図記録およびin vivo EPSを施行した.十分な鎮静下,電極を四肢に装着し体表面心電図を記録した後,内頸静脈切開法によりNuMed社 2Fr 8 極電極カテーテルを挿入し,遠位 4 極を右室内,近位 4 極を右房内に留置し,おのおの 2 極間で刺激・電位記録を行った.従来の方法で洞結節,心房,房室結節,心室の電気特性を評価し,さらにプログラム刺激により催不整脈性を検討した.【結果】正常ラットでは,体表面心電図記録により心拍数387.2 ± 7.8bpm,PR 45.5 ± 0.7ms,QRS 34.6 ± 0.4ms,QTc 57.2 ± 0.7ms,in vivo EPSにより洞結節回復時間190.0 ± 4.0ms,房室結節有効不応期(ERP)81.4 ± 2.3ms,心房ERP 22.2 ± 1.7ms,心房頻回刺激下Wenckebach(WB)型房室ブロック時間97.8 ± 1.4ms,同 2:1 房室ブロック時間85.3 ± 1.2ms,心室頻回刺激下WB型室房ブロック時間148.5 ± 4.8ms,心室ERP 42.3 ± 2.4msであった.心房頻拍は 7 例,心室頻拍は 3 例に誘発された.【結語】ラットでのin vivo EPSの手技と基本データを確立できた.現在,心負荷モデルラットに応用し検討中である.

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