I-PD-3
乳児期無輸血開心術術後遠隔期精神運動発達への影響―多施設によるVSD術後例の検討―
あいち小児保健医療総合センター心臓外科1),あいち小児保健医療総合センター循環器科2)
前田正信1),岩瀬仁一1),鵜飼和彦1),佐々木滋1),長嶋正實2),安田東始哲2),沼口 敦2),足達信子2)

【目的】乳児期無輸血体外循環の安全性を検証するために,乳児期VSD閉鎖術に焦点を絞って,術後の精神発達を全国 7 施設(あいち小児センター,岡山大学病院,国立循環器病センター,榊原記念病院,静岡県立こども病院,中京病院,福岡市立こども病院)の調査で検討した.【対象および方法】12カ月未満(4.8 ± 2.6月)で閉鎖手術を行ったVSD術後遠隔期患者(5 カ月~3 歳)(24.2 ± 15.8月)(143例)に対し津守稲毛式乳幼児精神発達質問紙を保護者の記載で行い,年齢による指数化(標準100)して,無輸血(a)群・術後輸血(b)群・体外循環初期輸血(c)群に分け,各種因子(手術時月齢・体重,最低Hb値,体外循環流量,体外循環時間等)との関連性を検討した.TGA手術後(ASO群50例)および弓部再建 + VSD閉鎖術後患児(arch群40例)の発達検査も参考にした.【結果】VSD群:ASO群:arch群の発達指数は99.5 ± 15.8:103.1 ± 14.5:97.2 ± 20.3で有意差はなかった.VSD群中a群(52例):b群(24例):c群(66例)の発達指数は94.7 ± 11.6:103.5 ± 16.0:101.7 ± 17.9で,a < b(p = 0.008)およびa < c(p = 0.016)であった.a群において体外循環中最低Hb値と発達指数に明らかな相関関係は認められなかったが,最低Hb値を 6g/dlで 2 群に分けると未満群の発達指数(93.0 ± 13.0)は以上群(98.7 ± 8.3)に比し低い傾向(p = 0.10)にあった.【考察】多施設での調査であるので,体外循環条件の違いはあるものの,乳児期VSD症例の遠隔期精神発達指数において無輸血症例群は,術後輸血症例および血液充填群よりやや低い傾向にあった.その体外循環中最低Hb値が 6g/dl未満例にその傾向が出ているように思われた.【追加調査】当センターで行った小児開心術での周術期S100蛋白・近赤外線脳酸素飽和度モニター等の検討を行い,希釈体外循環による脳への影響の有無を検証した.

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