I-S-5
看護におけるリスクマネジメント―モニター事故を防ぐには―
国立成育医療センターICU看護師長
八代尚美

最近,心電図モニターの管理,アラームの条件設定,監視体制の不備により,患者の急激な変化への対応が遅れて重大な結果を招くことになった事例が複数の施設で経験されている.そこで医療事故に結びつく可能性の高い心電図モニターの管理,アラームの条件設定,監視体制の不備を改善することを目的として検討を行った.特に小児期の患者をモニタリングする場合,以下のような特徴的な背景がある.(1) 電極装着上の問題点:低栄養等の理由で骨が突出していたり,皮膚が湿潤していることが多い等,電極の装着に適する場所は狭く,はがれやすい.(2)アラームの条件設定上の問題点:啼泣や日常の動作によっても心拍数の変動が大きく,アラームの設定範囲を超え変化し,アラームが頻回に鳴る.(3)1 人の患者に複数のモニターが装着されており,また病棟内には多種多様のモニターなど医療機器が存在し,それぞれからアラームが発生している.このような背景のもと実際の現場での問題点としては,(1) 医師や看護師がアラーム音に慣れてしまい,緊急との認識が薄らぐ.(2) 多数のアラームが混在することも,「緊急事態を知らせる警報」という本来の意義に影響している.これらの問題を解決するには,疾患に関する看護の専門性,十分な監視体制の確保など短期的には解決困難な問題も多い.しかし,アラームの設定条件の再検討など,すぐに取り掛かることが可能な問題もある.心電図モニターというあまりにも身近な存在について改めて皆さまと一緒に考えたい.

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