I-B-2
共通房室弁逆流を伴うFontan candidatesに対する外科治療
静岡県立こども病院心臓血管外科
太田教隆,猪飼秋夫,村田眞哉,中田朋宏,井出雄二郎,坂本喜三郎

【目的】機能的単心室おいて,手術時期にかかわらず房室弁逆流に対し必要に応じて外科的治療を行ってきた.それらに対し検討を加え報告する.【対象】機能的単心室に対し房室弁形成術を行った全50症例.それらに対し60件の房室弁形成術を行った.内訳は,high risk疾患群31例(HLHS:8,Asp:15,Poly:3):H群,その他疾患群19例(SV:4,TA:1,cTGA:4,ECD:2,DORV:2,TGA:1,その他:3):N群であった.【手術と結果】房室弁形成は 1st stage,2nd stage時までは80% of TV normalまで,final stage時以降は80% of MV normalを弁輪下限目標にして適宜水テストを繰り返しながら形成術を行った.全症例狭窄所見はない.共通房室弁型(CAV)26例,三尖弁型(TV)21例,僧帽弁型(MV)3 例であった.乳児期に房室弁形成を行ったのが23例,それ以降に行ったのが27例であった.全体での房室弁に対する再介入回避率(%)は89.6(0.5年),78.8(1 年),78.8(10年)であり 1 年以降の再増悪症例はなかった.再手術症例は10例で 4 例に人工弁置換術を行った.全体での生存率は,92.0%(1 年),75.1%(2 年),72.9%(3 年),70.5%(20年)であった.一方,疾患群別生存率%(H群,N群)では(87.0,100)1 年,(59.3,100)2 年,(51.9,100)10年でありN群においては弁形成術後も全例最終手術到達可能であった.H群31例における生存率%(乳児期施行,乳児期以降施行)は,(78.6,100)1 年,(33.7,90)2 年,(28.1,90)7 年(p < 0.01)と乳児期以降の弁形成術施行例は優位に最終手術到達可能であった.一方,H群では疾患特有のほか合併奇形(PVO,不整脈,感染)も多くみられその生存率への関与も示唆される.【考察と結語】通常の機能的単心室において重度房室弁逆流が生じても形態に応じた適切な弁形成により十分最終手術に到達し得た.ほか致命的なrisk factorを持つ疾患群においては,早期弁形成介入を要する症例で今後検討が必要だが約半数が最終手術到達可能であった.

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