I-B-3
機能的単心室症の房室弁逆流と外科治療
国立成育医療センター心臓血管外科1),東京大学医学部2)
竹内 功1),関口昭彦1),村上 新2),藤崎正之1),戸成邦彦1),高岡哲弘2),高本眞一2)

【目的】房室弁逆流(AVVR)は機能的単心室(1V)修復の危険因子と考えられる.【方法】今回1998年 1 月~2005年 6 月に 2 施設で行われた 1V修復症例についてAVVRを中心に検討した.【成績】症例は112例(男:女 = 72:40)で,術前診断はheterotaxy:39(無脾:25,多脾:14),肺動脈閉鎖:12,三尖弁閉鎖:10,HLHS:12,DORV:12,単心室:11,その他16例.術後早中期遠隔期に計24例(21.4%)の死亡を認め,HLHS + heterotaxyが16例(67%)を占めた.経過観察期間は37.8カ月(median)で,生存例88例中Fontan到達例が41例,BDG到達例が14例であった.術前にmild以上のAVVRを認めた症例は36例(moderate以上18例)で,経過中のAVVR悪化例17例,改善例13例であった.AVVR moderate以上の10例に外科治療(計12回の弁形成術,計 6 回の弁置換術)が行われた.弁形成術式は全周性弁輪形成:2,半周性弁輪形成 + 弁閉鎖(VC):1,Reed A:1,交連形成(C):3,C + cleft閉鎖(CC):1,CC:1,VC:2,kissing repair:1 であった.全症例の生存率(Kaplan-Meier)は 1 年82.1%[78.5~85.7](95%CI),7 年75.7 %[69.6~80.8]で,HLHSでは 3 カ月40%[24.5~55.5]と最も低く,次いでasplenia群が不良で 7 年65.3%[53.5~77.1]であった.現在severe AVVRの 1 症例は心機能が悪く内科治療中である.ほか 5 例にmoderate AVVRを認めるが,全身状態は比較的良好である.AVVRの発生と診断名には相関はなかった.trivial以上のAVVRを有する症例または診断名(HLHS + asplenia)と死亡との相関は有意で(ともにp < 0.01,Pearson correlation),AVVR症例では死亡の可能性が6.2倍高かった(p < 0.01,logistic regression).【結論】乳幼児期での弁形成は弁輪縫縮,交連形成,cleft閉鎖がおもな術式であったが,数回の形成を必要とする症例があった.moderate以上の症例は死亡率が高く,シャント部位,Glennの時期の検討が必要である.

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